2話



結局、カカシが来たのは数時間後だった。



「やー諸君、おはよう!」



とか、言いながら。



『おっそーい!!』



皆がブーイングをしてるのを、カカシは華麗にスル―し時計をセットしに行く。



「よし! 12時セットOK!!」

「?」

「ここにスズが2つある……。これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ。

もし、昼までにオレからスズを奪えなかった奴は昼メシ抜き! あの丸太に縛り付けた上に目の前でオレが弁当を食うから」

『(朝めし食うなって……そういう事だったのね)』



その言葉に皆が沈み、そしてお腹の音だけが虚しく響いていた。

そんな中、私は涼しい顔をしてナルトに話しかけた。



「<皆いい子だねー。素直に言うこと聞くなんて>」

「<お前が捻くれてるだけなんじゃねーの?>」


「<なんか言った?>」

「<いやーなんも?>」



二人が話しているときも、カカシの話しは続く。



「スズは一人1つでいい。3つしかないら……必然的に一人丸太行きになる。 ……で! スズを取れない奴は任務失敗って事で失格だ! つまり、この中でも最低一人は学校へ戻ってもらうことになるわけだ……」



皆の顔に緊張が走る。



「手裏剣も使っていいぞ。オレを殺すつもりで来ないと取れないからな」

「でも!! 危ないわよ先生!!」



表ではサクラに心配してもらっていたが、裏では……。



「<ホントに殺すつもりでいいの? なら、頑張るよ?>」

「そうそう! 黒板消しも避けれねーほどドンくせ―のにィ!! 本当に殺しちまうってばよ!!

<カカシだったら、ちょうどいい運動相手なるしな>」

「世間じゃさぁ、実力のない奴にかぎってホエたがる。そう強がるなよ。ま……ドベはほっといて、よーいスタートの合図で。<勘弁してね? 二人だとホント死ぬから>」



ナルトがドベという言葉に反応し、カカシに向かって行く。

しかし、すぐにクナイを奪われ、逆にそれを頭に突き付けられる。



「そう慌てんなよ。まだ、スタート言ってないだろ」

「(うそ……! まるで見えなかった)」

「(……これが上忍か)」

「でも、ま……オレを殺るつもりで来る気になったようだな……。

やっと、オレを認めてくれたかな? ククク……なんだかな、やっとお前らを好きになれそうだ。……じゃ、始めるぞ!! ……よーい……スタート!!」



その合図とともに皆が一斉に隠れる。



「忍たる者――基本は気配を消し隠れるべし」



遠くの方で、そんな声が聞こえてきた。



こんな天気が良いのに演習とか……うん、ないね。 こういう日はお昼寝に限るよね♪



私は早々に分身に任せ、木の上から皆の様子を傍観していた。

すると下の方からマヌケな声が聞こえてきた。



「いざ、尋常に勝〜負!! しょーぶったら、しょーぶ!!」



……うわぁ、真面目。



「……あのさァ……お前ちっとズレとるのォ……<あれ? ナルトまだ分身に任せてないんだね>」

「(あの、ウスラトンカチ……)」

「ズレてんのは、その髪のセンスだろー!!<少しは真面目にやっておいた方がいいだろ?>」



そう言うと、その場から駆け出し、カカシに向かって行く。

すると、カカシが徐にポケットから何かを取り出す。



「!! うっ……」

「忍戦術の心得その1――体術!! ……を教えてやる。<まあね。でも程々にしてよ? オレまだ死にたくないから>」

「!?<あー考えとく?>」



ナルトは驚いた。カカシが出したのが武器ではなく本だったから。



「……? どうした、早くかかって来いって」

「……でも……あのさ? あのさ? なんで本なんか……?」

「なんでって……本の続きが気になってたからだよ。別に気にすんな……お前らとじゃ本読んでても関係ないから」



「!! ボコボコにしてやる……(あー……幻術でもかけとくか)」



ナルトが一瞬にして幻術をかける。



「これでフツーに話せるわ。……んじゃ、始めっか」

「……ははっ」



それから数十分。二人は組手を続けていたが、いい加減止めることにする。



「あーそろそろ、幻術解いた方がいいかもな」

「オレも他の子達とも相手しなくちゃね」

「じゃ、オレも分身に任すから。またな」

「あとでね」



そう言って先にカカシがその場から離れる。



「……さてと、オレもを捜すか」



* * *



その頃、私はというと傍観するのを飽きて寝ようとしていた。



「……風が気持ちいなぁ……」 ずっと此処に居れたらいいのに……



そう思いながらゆっくりと目を閉じる。

ふと、目を開けると、そこは暗闇だった。



「あれ?」



よく分からず、ここ何処だよ? と暫く暗闇を歩いていると、遠くの方で明かりが見えてきた。

その明かりを目指して歩くと、そこに人影があった。

誰だろう? とその人影をよく見てみると……。



「……え?」



瞬間、身体が震えだす。その人物のことをよく知っていた。

何度、願ったんだろう。もう一度会いたいと……けど、有り得ない。なんで? が頭に中をぐるぐる回り出して、落ち着く為にその人物の名を口に出す。



「……洸?」

「…………」



だが、反応がなくもう一度、名前を呼ぶ。



「洸? なんで黙ってるの?」

「…………」

「なんか言ってよ!」



それでも洸は黙っていた。



「洸?」



今度は反応してくれた。けど、それは私にとって、とてもキツい言葉だった。



「……お前なんか助けなきゃ良かった」

「……っ!!」



それだけ言うと洸は消えた。

それと同時に私も目を覚ます。飛び起きて、周りを見てみると暗闇に行く前と同じ風景が広がっていた。



…………夢?



「……随分うなされてたけど、大丈夫か?」



声がした方を向くと、横の枝にナルトがいた。



「……ナルト?」

「ホントだいじょーぶ?;」



ナルトがなに言ってんだ? みたいな顔をして私を見ている。



……あー……あれは夢だったのか……。



そう思った瞬間、ポタポタと涙が落ちていく。



「!?」



私は、また寝っころがり、涙が見えないように腕で目を隠す。



「……夢かぁ……そっか……」



……でも……もし、また洸の夢が見れるなら……もう少し良い夢が見たいな……。



「……?」



ナルトの不安そうな声が聞こえ、私は涙を拭き起き上がる。



「平気だよ?」



そう言ってニッと笑った。

私の顔に笑顔が戻って、ナルトは少し安心したようだ。



「……たくっ。お前は笑うしか能がないんだから、いつも笑っとけよ」

「!! ……ナルト君。それどういう意味?」

「え? ……ははっ……」



自分の失言に気付き、私の持っている物にも気付いたようだ。



「……まるで私が笑うしか出来ない能無しってこと? ねぇ?」

「……な、なぁ……? オレが悪いって認めるから、その手の中にあるクナイ退かしてくんない?」

「えー嫌だ」



そう言うと、ナルトが望んでいる笑顔を浮かべ、クナイをクルクル回しながら隣の枝に飛び乗る。



「……お、おい? ? 落ち着け!?」



悲痛な声を上げているナルトに満足し、クナイを下す。



「嘘だよ?」

「……死ぬかと思った」



そんなナルトを見ながら、けらけら笑っていると下からボンッという爆発音とともにカカシの声が聞こえてきた。



「……やっと見つけた。あっナルトも一緒か」

「どうしたのー?」

「よっ」

「どうしたのー? じゃないよ。少しはやる気見せよーよ?」

「嫌だ♪」

「……はぁ」

「しょうがねーよ、だし」

「それに、ホラ……」

『?』

「時間切れ♪」



そう言った瞬間、終了したという音が聞こえてきた。



「あっ」

「……すげぇ」

「んじゃ、行こっか」



私は下に降りると、二人を置いて集合場所に向かって歩き出した。



……それにしても驚いたな。ナルトが洸と同じこと言うとはね……。



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