3話



――10分後



途中、ナルトが分身と入れ替わり、今は本体の方が丸太に縛り付けられていた。

ぎゅるるるるというお腹の音が響く。



「おーおー、腹の虫が鳴っとるね……君達。ところで、この演習についてだが。ま! お前らは忍者学校に戻る必要もないな」

『!!』

「(え? 私……気絶してただけなんだけど……いいのかな、アレで(愛は勝つ! しゃーんなろ!!)」

「フン」



バタバタと縛れているナルトが暴れ。



「じゃあさ! じゃあさ! ってことは4人とも……」



安心したような、喜んでいるような、それぞれの思いが重なりそれが隠せないようだった。

……だが、私はそんな皆を内心笑っていた。



……クスッ。世の中そんなに甘いわけないでしょ?



「……そう。4人とも……忍者をやめろ!」

「!!!?」



皆の喜んだ顔が固まり、そして驚愕する。



「忍者をやめろって、どーゆーことだよォ!! そりゃさ! そりゃさ! 確かにスズは取れなかったけど!

なんで、やめろまで言われなくちゃなんねぇんだよ!!(まっ当然だよなぁ。こんな個人プレーの多い奴らだと……)」



吠えるナルトだが、内心納得していた。



「どいつもこいつも、忍者になる資格もねぇガキだってことだよ」



この一言にサスケが反応する。そして、カカシに向かって行った。

だがすぐに、抑え込まれカカシに踏まれる。



「!」

「あ!」

「サスケ君!!」

「だからガキだってんだ」

「!!<あーあ、せっかちな奴>」

「サスケ君を踏むなんてダメー!!!」

「サクラ、そんな事言ってる場合じゃ……<サスケって馬鹿でしょ。普通上忍相手に突っ込まないって>」

「<だよなぁ>」



そんなこと言っていると、カカシに睨まれ……。



「お前ら忍者なめてんのか。あ!? 何の為に班ごとのチームに分けて講習やってると思ってる」

「え!? ……どーゆーこと?」

「つまり……お前らは、この試験の答えをまるで理解していない……」

「答え……!?」

「そうだ。この試験の合否を判断する答えだ」



サクラはまだカカシの言っている意味を分かっていないようだ。



「だから……さっきからそれが聞きたいんです」

「……ったく」


「あーもー! だから答えって何なんだってばよォ!?」

「……、教えてやれ」

「え?」

「答え分かっているんだろ?」



なんで私が……と思ったが、行っても無駄だと思いその問いに答えた。



「……チームワークだよ」

『!』

「皆で行けばスズ取れたかもね?<ねぇ、答え教えるのナルトでも良くない?>」

「<いや、ドベのオレが答えたら怪しまれるから>」


「<ドべ!!>」

「<てめっ!!>」



裏で二人が言い争いをしてる中、サクラは一人考えていた。



「!(……って……ちょっと待って!)なんでスズ3つしかないのにチームワークなわけェ?

4人で必死にスズ取ったとして、1人我慢しなきゃなんないなんてチームワークどころか仲間割れよ!」

「当たり前だ! これはわざと仲間割れするよう仕組んだ試験だ」

「!!」

「え!?」

「この仕組まれた試験内容の状況下でも、自分の利害に関係なく、

チームワークを優先できるものを選抜するのが目的だった。それなのにお前らときたら……」



そして順番に名前を言っていく。



「……サクラ……お前は目の前のナルトじゃなく、どこに居るのかも分からないサスケのことばかり」

「!!」

「サスケ! お前は3人を足手まといと決めつけ、個人プレイ。ナルト! お前は一人で独走するだけ。

! お前は試験の主旨を分かっていながら皆に教えず、ただ様子を見てるだけ! 任務は班で行う! たしかに忍者にとって卓越した技能は必要だ。

……が、それ以上に重要視されるのは”チームワーク”チームワークを乱す個人プレイは仲間を危機に落とし入れ」



ゴソゴソとポーチの中の何かを探しすカカシ。



「?」

「!」

「……」

「殺すことになる。……例えばだ……」



ポーチから取り出したのはクナイだった。そして、そのクナイをサスケに突きつける。



「サクラ! ナルトとを殺せ。さもないと、サスケが死ぬぞ」

「!!」

「は!?<カカシひどっ! いーよ? あとで嫌がらせしてやる!>」

「え!?<それ、オレも手伝う!>」

「と……こうなる<ちょっと! 危ない会話しないでよ!>」



そう言うと、サスケに突き付けていたクナイを退かした。



「なんだぁ……ビックリしちゃった」

「カカシ先生、恐いこと言わないでよ!!<これが実戦とかだったら、私達サクラに殺されれてたんじゃない? ……まっその前に殺るけど♪>」

「<サラッと問題発言してんじゃねーよ。先生! が危ないこと考えてまーす!>」

「任務は、命がけの仕事ばかりだ!<、止めようねー?>」

「<……おい>」



ザッと移動し、石版の方に近付くカカシ。



「これを見ろ。この石に刻んである無数の名前」



そう言うと、私達にその石版を見せる。



「これは全て、里の英雄と呼ばれている忍者達だ」



……洸……。



「(……うわぁ。これに反応すんのスゲー嫌なんだけど)」



ナルトは英雄という単語に反応するのが凄い嫌だった。……だが、すぐに諦めて。



「それそれそれそれ。それーっ!! それいーっ!! オレもそこに名を刻むってことを今決めたーっ!!

英雄! 英雄! 犬死なんてするかってばよ!!(……ぜってぇ嫌)」

「!」

「フン……」

「ナルト、本当に此処に名を刻みたいの?」

「ああ! ここに名を刻みたいってばよ!!」

「……ふーん。そっかー、そんなに殉職した英雄達になりたいんだー<いやぁ、ナルトにそんな趣味が有ったとは、私びっくりー>」



あえて殉職の部分を強調して言う。



「!!<んなわけねーだろ! 殉職なんてごめんだ!!>」

「そう、これは慰霊碑。この中にはオレの親友の名も刻まれてる……」



…………ああ、だから夢を見たのかな。そういえば最近、お墓参りしてないや……催促?



さっきの夢を思い出しながら、苦虫を噛む。



「……お前ら……! 最後にもう一度だけチャンスをやる。ただし、昼からはもっと過酷なスズ取り合戦だ!

挑戦したい奴だけ弁当を食え。ただし、ナルトには食わせるな」

「え?」


「ルールを破って一人、昼飯を食おうとしたバツだ。もし、食わせたたりしたら、そいつをその時点で試験失格にする。ここではオレがルールだ。わかったな」



それだけ言うと、カカシはどこかへ消えた。



* * *



「へっ! オレってば、別にめしなんか食わなくたって平気だっ……」



そう言った瞬間、ナルトのお腹が鳴った。



「無理しちゃって」

「無理なんかしてないってばよ!」

「はい、あーんv」

「っ!! いいってばよ。そんなことしたら、失格になるぞ<……お前はなにがしたいんだ?>」

「いいよ、別に。今がダメでもいつかなるし?<恋人ごっこ♪>」



ってかすでに下忍じゃないしね。



「今はナルトの方が大事<んで、食べてくれないんですか?>」

『!!』

「……で、でも、の食べる分が……<丁重にお断りするわ>」

「いいの、いいの。ホラ食べて<……けっ>」

「……ホラよ」



今まで黙っていたサスケが自分のお弁当をナルトに差し出す。



「!」

「!!」

「!! ちょ……ちょっと2人とも! さっき先生が!!」



サクラが慌てて言う。



「あーそれなら平気だよ。今、気配ないから?」



……嘘だけど。ホントは、すぐそこにいるんだよね。



「足手まといになられちゃ、こっちが困るからな」

「(サスケ君…………)」



サクラが何かを決心する。そして、私に自分のお弁当を差し出した。



「!」



……サクラ……。



「サクラ。ありがとう!<……これで合格だね>」

「へへへ、ありがと……<だな。あっそろそろ……>」



ナルトがそう言った瞬間、カカシが本当に出て来た。ボンという音とともに。



「……お前らあああ!!」

「!」

「うわあああ」

「ひっ」


「きゃあああああ」

「ごーかっくv」



ニコっと笑うカカシ。



「え!?」

「は?」

「……」

「合格!? なんで!?」

「お前らが初めてだ」

「え?」

「?」

「今までの奴らは、素直にオレの言うことを聞くだけのボンクラどもばかりだったからな」



……なんか引っ掛かるよ。カカシ。



「……忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。……けどな! 仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」

「アハ……」

「フン……」

「やった!」

「……」



皆の顔が笑顔になる。



「これにて演習終わり。全員合格!! よォーしィ! 第7班は明日より任務開始だァ!!」

「やったああってばよォ!! オレ、いえーい!! 忍者! 忍者!! 忍者!!」



……テンション高くない?



「サッ! 帰るぞ」

「あー眠いー」

「しゃーんなろー!!」

「フン」


「……って! どうせこんなオチだと思ってったってばよォ!! 縄ほどけェー!!」



遠くの方でなにか騒いでいたが、それを無視する。



* * *



「……んじゃ、また明日!」



そう言って、私は来た道を引き返そうとすると、サクラに呼び止められた。



? そっちは今、来た道じゃない」

「ん? あーナルトが心配だから」

「そっか。また明日ね」



* * *



「……そろそろ良いよな? んじゃ、帰りますか」



そう呟くと、ナルトは縄抜けの術を使おうする。……だが。



「……暗部の中で有名な江狐さんなのに……基本の縄抜けが出来ないとか。ショックー」



目の前には帰ったはずのがいた。



「……は?」

「憧れてたのにー」

「それいつまで続くんだ?」

「君がその縄を解くまで?」

「もう、解いてるし」

「んじゃ、帰ろ♪」



さて、今日の夕飯なににしよう? 作るの面倒だし一楽に行くかな。



「ナルト、一楽行こう?」

「おう!」



一楽と聞いて、一気にテンションが上がるナルトを横目で見て、微笑ましいと思いながら私は歩いていた。



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下忍編は長いので、一端終了。

次からは波の国編です。