3話
数年前。その頃から、私は暗部をやってた。
あの頃は、今よりも弱かったから、火影専属じゃなかったけど。
それでも今と違って、信じてる人達がいた。
私は笑みを浮かべた。
昔を懐かしむように、そっと……。
* * *
「危ない!! !!!」
「……え?」
ザクッ
「……全く。アンタって本当にマヌケねぇ。普通、戦闘中にボーッとする?」
危険を知らせてくれたのが、洸。
敵を倒してくれたのが、葉月。
二人は私の暗部仲間だった。……そして二人が私が信じてた人達。
「ゴメン! 助かった!」
「ゴメンで済ますんじゃねぇーよ!!」
「ゴメンじゃないわよ!!」
「あ……あはは」
『あはは、じゃない!!』
「……ですよね」
同時にツっこまれ、笑うしかない。
それから数時間。説教タイムに入り解放されるまで、私はひたすら謝るのだった。
* * *
また別の日。
「あー。眠いー」
「……またそれかよ」
洸が軽く呆れながら私を見る。
「またって何ー?」
洸はそれには答えず、代わりに葉月が言った。
「だって、いつもそう言ってるわよ?」
「そうかなぁ?」
「ああ、毎回」
「まぁ、それがでしょう」
そう言って、クスクス笑う葉月。
「まあな」
それに釣られるように、洸もけらけらと笑いだす始末。
「……おい」
二人にそこまで言われ、しかも笑われた。
不服だったが、また里に向かって進みだす。
だが、5分後。
「眠いー」
瞼達が離れたくないと、主張し始める。
このままでは里まで持たない気がして、瞼達の再会をなんとか阻止する良い方法がないかと私は必死に考える。
そして、一つの名案を思い付く。
「洸!」
「ん?」
……眠いだけだと無視したくせに。まぁいいや。
「おんぶ♪」
「……はい? もう一回言ってみ?」
「だからおんぶ。もう限界です。眠いです。瞼達の再会をこれ以上、邪魔しちゃいけないと思うんだ」
「ガキ」
「ガキだもん。洸、おんぶ」
「良いじゃない。おんぶくらいしてあげなさいよ?」
葉月が助け舟を出してくれる。
「……わかったよ。ほら」
葉月にまで言われ、諦めたのか、洸がしゃがんでくれた。その背中に私は勢いよく飛び乗った。
「うわっ! 勢いつけて乗るな! ってか軽っ!! お前ちゃんと食ってんの?」
「食べてるよ? 睡眠の次に食事大事!」
「欲求に忠実だな……」
「だろ?」
「褒めてねーよ?」
「あはっ。 あー極楽。洸の背中温かーい」
「……そっか」
「洸」
「ん?」
「大好き」
「はいはい。俺もちゃんが大好きですよー」
「……アンタ達、仲良いわね」
「でしょ?」
「、寝ろ」
「それがさぁ、あんな眠かったのに、眠気が飛んだ」
「よし、降りろ」
「嫌だ」
……結局。なんだかんだ言いながらも、洸は里に着くまでおんぶをしてくれた。
ありがとう、洸。
* * *
お兄ちゃんみたいな洸。
お姉ちゃんみたいな葉月。
怒鳴られたり、からかわれたり、一緒に泣いたり、一緒に笑ったり、
私はそんな毎日がとても楽しかった。
だけど、この幸せは長くは続かなかった……。
少しずつだけど、確実に消えていった。
異変が起こったときには、もう全てが修復出来なかった。
……葉月が里を裏切った。
里の者達を殺害し、そのまま外へ逃げたのだ。
……私と洸を裏切っって……。
それは、変えることの出来ない事実……。
* * *
私と洸は、すぐに葉月を追いかけた。
そして木の葉と外の境界線で葉月に追いついた。
「葉月!」
「……あら、二人が来たの?」
「なんで里の人達を殺したの!?」
「殺したかったから?」
「……てめぇ」
「……葉月の快楽の為だけに殺したの?」
「そうよ」
「……なんで? ……里のことも、……私達の事も裏切ったの……? ……信じてたのに……」
「裏切った? 信じてた? ……なに言ってんの? アハハハハッ!!
、良いこと教えてあげる。
私はね、昔からあんた達のこと、一度でも仲間だなんて思ったことないわ。
あんた達といると、何かと良いことがあるから利用してたの♪」
「!!」
「……え?」
「……それも、もうお終い。二度と私の前に現れないでね?
あっ違うわね。二度と会わないように、私が殺してあげる♪ 私に殺されて光栄でしょう?」
そう言うと、葉月は笑いながら、私と洸に向かってクナイを投げてきた。
ヒュンッ
カッ!!
私達はそれを、すぐさま避ける。
『…………』
「あら。……でも、甘いよ?」
「?」
「!!」
私はその意味が分からなかった。
……このとき、もっと早くその意味を理解してたら、何かが変わっていたのかな?
すぐに意味理解した洸は急いで、の下に行くと、をそこから突き飛ばした。
「きゃっ!」
その瞬間。
ドォォーーン!!!!
激しい爆発音とともに、爆風が二人を襲う。
周りには、まだ黒煙があり、よく見えなかったが洸らしき人影を見つけ、私はお礼を言った。
「洸? ありがとう、助かった」
……しかし、洸からの返事がない。
不思議に思い、煙が収まってから、ふと、下を見てみると、洸は一応そこにいた。
だが、いつもと様子が違う。
「……洸?」
「……よう……」
「……洸……」
いつもと違い、とても弱々しく、すぐに医者に見せたとしても、助からないであろう状態。
瀕死。……洸は死にかけていた。
「……んな顔……すんな……って……」
私に心配かけまいと、自分の方が辛いはずなのに必死に笑っていた。
そんな洸を見て、ポロポロ、ポロポロ涙が出てきて止まらない。
「……洸ごめんね、ごめんね。私いつも洸に助けてもらってばっかだ」
「……謝んな。……、お前は……笑うだ……けしか……能が……ないんだか……ら……。いつも……笑っとけ?」
捻くれてるけど、それが洸の慰めと、精一杯の褒め言葉だと分かると、私は必死に涙を堪え。
「……洸。ありがとう……」
私は今までで、一番の笑顔を洸に見せた。
「……うん……。お前……は……や……っぱ、笑……った方が……似合う……」
安心したのか、ゆっくりと目を閉じていく。
それを最後に、二度と洸の声が聞こえてくることはなかった。
* * *
「……あら。そいつ死んじゃったわけ?」
「…………」
葉月が何か言っているが、私の耳には届かない。
……練習中だっだけど、出来るよね?
葉月に見えないように印を組み、そっと詠唱する。
詠唱が終わり、葉月の方を見るとぽつりとその名を呟く。
「……水仙華」
「え?」
ヒュンッ
「!!」
葉月は自分に向かってくる大量の氷柱が見える。そして、それを避けようとしたが、なぜか体が動かない。
ドカッ!!
「ごふっ! ……なん……で……?」
私は葉月の下へ近寄ると、微かに光るそれを見せた。
「これ、なんだかわかる?」
「……テグ……ス?」
「正解。……バイバイ」
……ヒュッ……!
* * *
……大切な人が自分だけ残して死んだ。
……もういい。もういいよ。
……もう二度と他人を信用なんてしない。
……こんな辛い思いをするなら、一人の方がいい。
Top・Back・Next