4話
話が終わり、二人が黙っている中、私が口を開く。
「……まあ。こんな感じです。
もういいですよね? 二度と私に近づかないで下さい。それでは」
それだけ言うと、私は立ち上がる。
……すると、今まで黙っていた江狐さんが話し出した。
「……知ってると思うけど、オレの中には九尾がいる。そのせいで、昔から里の奴に毛嫌いされてきた」
「……?」
……なにが言いたいんだろう?
「……だから、オレも人のこと言えねぇけど、今でも一部の奴しか信じらんねぇ」
「……」
「正直、お前のことも信用できない」
……なにを今更。そんなの言われなくても分かってる。……さて、行くか。
江狐さんの話しが終わったと思い、私は歩き出した。
「……けど、里の奴と違う反応をしたお前なら、信じられるんじゃないかって思った」
「!!」
その言葉に私は驚き、歩みを止める。
「蒼鹿も、そう思わねぇ?」
「だな」
黙っていた蒼鹿も、急に話しを振られたというのに、慌てることなく同意する。
「…………」
私は戸惑っていた。
最初だけ仲良くするフリをして、また裏切るんじゃないの? また私の前から居なくなるんじゃないの……?
……ふと、洸のことを思い出す。
確かに、葉月は私を裏切った。
けど、洸は?
洸は最期まで私の側にいてくれた。
……洸は最期まで私を守ってくれた。
ねぇ。洸? この二人なら信じても大丈夫かな?
心の中で洸に問いかける。
そのとき風が優しく吹いた。……まるで洸が笑って、大丈夫だと言っているみたいだった。
* * *
「〈やっぱ、無理だったか?〉」
「〈さぁ? わかんねぇ〉」
スッ
私は自分のお面を取ると、二人がいる方に振り返ると、口を開く。
「……江狐と蒼鹿なら信じてみようかな?」
『!!』
それだけ言うと、は、くるりと前を向き歩きだした。
残された二人はというと……。
「……まともに敬語以外の話し方されたの、初めてな気がする……。 オレの気のせい?」
「……気のせいじゃないと思うぞ、江狐」
「帰らないの?」
「……あ、いや……帰るか」
「……ああ」
「? 変なの」
今までの態度と違いすぎてついていけない二人。
そんな二人をは不思議に思いながら、大して気にせず、また歩き出した。
一方。この様子を水晶で見ていた火影は、三人の様子を微笑みながら見ていた。
「……どうやら、上手くいったようじゃな」
* * *
数か月後。三人は同じ任務をするようになっていた。
そして今は、任務の帰り道だった。
「ねーむーいー!!」
「……またそれかよ」
「なんで毎回、毎回眠いんだよ?」
軽く呆れながらも、蒼鹿が理由を聞く。
「育ち盛りだから?」
「なんで疑問系なんだよ」
「うるさいよ。江狐」
「はぁ!?」
「二人ともうるせぇ。あっもうすぐ木の葉につくぜ」
少し五月蝿くなってきたので、蒼鹿が二人を止める。
「ホントだーー。もうちょいで眠れる♪」
「…………」
途端、変わるに、江狐は苦笑いしながら彼女を見る。
「ん? なに江狐」
「……なんでもねぇ」
「……なぁ。あそこに人、居ないか?」
「え?」
「あ?」
蒼鹿の問いに、二人は間抜けな返答をする。
「えっ? どこ?」
「ほら、あそこ」
そう言って、蒼鹿は里の入り口あたりを指でさす。
「ホントだ」
「なぁ。もうちょっと近づいてみねぇ?」
「うん」
「おー」
三人はそっと、人に近づいていく。
「……あれって……」
「ああ。……カ……」
「カカシだ!!」
『!?』
江孤が言うのをが遮り、それだけ言うと、その人物向かい走り出す。
大きな声に、二人は驚き、
ポカンとしながらその光景を見ていると、は既にその人物のすぐ側まで行っていた。
「カカシーー!!」
「うん?」
その人物ーーカカシが振り向くと、なぜか目の前にがいて、あっというまに自分に抱きついていた。
ギュッ
「会いたかった!!」
「わっ! びっくりしたぁ。なんで知……」
私はカカシが最後まで言う前に遮る。
「カカシ! その先は言っちゃダメ」
「あっ。ごめーんね?」
「いいよ。気にしなくて」
『…………』
遠くでその光景を見ていた江狐と、蒼鹿が呆気にとられていた。
「……なんだ、あれ?」
「…………さあな?」
「向こうに行くか……」
「ああ」
* * *
「お前、先行くなよ!」
「江狐! あはは。ごめんね?」
「がカカシと知り合いだったとはなぁ」
あとから来た蒼鹿がぽつりと呟く。
「あれー? が仲良くなったのって、江狐達だったんだ」
「お前らは、昔から仲いいのか?」
「うん。意外と付き合い長いかも」
「オレ達以外に仲良い奴いると思わなかった。カカシはすぐになれたのか?」
江狐の何気ない言葉を聞き、私は笑いだす。
そんな私に二人は驚いていたけど、カカシは心なしか顔が青くなっていた。
……しばらくして、落ついたので、私は笑った理由を話し出した。
「カカシも大変だったんだよ。それに、じーちゃんも……」
『は?』
「…………」
カカシは当時のことを思い出したのか、さっきより顔が青くなっていた。
「なにがあったんだ?」
気になったのか、江孤が聞いてきた。
「カカシとは小さい頃から仲は良かったんだけどね。
……事件の直後。私いつもピリピリしてて、そんな私を心配したじーちゃんが、カカシを見張り役にしてくれたんだよ。
んで、ある日、たまたま近くにいた二人を何故か殺したくなったんだよね。
まあ抑えたけど。いやぁ、あの時は危なかったね。……あれ? 二人ともどうしたの?」
『…………』
話が終わると、二人は沈黙。そして二人は思った。
『(……何故かで殺されてたまるか!!)』
そんな三人の様子を、カカシは笑って見ていた。
彼女に笑顔が戻って良かったと……。
* * *
まだ、ほんの僅かな時間だけど、江孤達を信じてみて良かった。
私幸せだなって思えるよ。
今度こそ、この幸せがずっと続くといいな……。
……いや。守られるんじゃなくて、守ろう。
今度は私が……。
Top・・Brck
これで出会い編終了!
それではアカデミー編で!!