6話



「…………」



私が起きたとき、江孤の姿はなかった。



「……起こしてって言ったじゃん!!」



* * *



江狐はというと、木の裏に隠れながら、イルカとミズキの会話を聞いていた。



……のこと置いてきたけど、大丈夫だよな? ……あとで、アイツに殴られそうだなぁ。

「起こしてって言ったじゃん!!」とか言いながら? ……ククッ……やべっ。なんか笑える。



そんなことを考えていると、何故か可笑しくなり、笑いそうになったが、なんとか堪える。

その頃、ちょうど彼女も同じこと言っているのを、彼は知らない。



「……あのバケ狐が、力を利用しない訳がない……。あいつはお前が思ってるような……」

「ああ!」



……たくっ……。



笑いを堪えたあと、江孤は二人の会話を聞くのを再開していた。



……お前らに認められたって、嬉しくねぇし。



本心からそう思った。そして、あまりにもバカらしい話しに呆れていた。



「……バケ狐ならな。けど、ナルトは違う。あいつは……あいつは、このオレが認めた優秀な生徒だ」



!!



「……努力家で、一途で……そのくせ不器用で、誰からも認めてもらえなくて……

あいつはもう、人の心の苦しみを知っている……。あいつは木ノ葉隠れの里の……うずまきナルトだ」

「! ……ケッ! めでてぇ野郎だな、イルカ…。お前は後にするっつったが、やめだ……。さっさと死ね。」



ミズキはそう言い、イルカに手裏剣を投げた。



…………はぁ。



ドカッ



『!!』

「(ナルト……!?)」

「……やってくれるじゃねーか……」

「……イルカ先生に手ェ出すな。殺すぞ……」



……オレって、お人好しだなぁ。



どこか、他人事のように思う。

最初は助ける気なんてなかった。別に殺されても構わないって思ってた。……でも。



……体が勝手に動いたんじゃ、しょうがねーよな。



そんな自分に、内心苦笑する。



「……バ……バカ! なんで出てきた!! 逃げろ!!」

「ほざくな!! てめぇみたいなガキ、一発で殴り殺してやるよ!!」



スッ



江狐が素早く印を組む。



……バーカ。



「やってみろカス! 千倍にして返してやっから」

「てめェ、それこそ、やれるもんならやってみろ。バケ狐ェェ!!!」

「……影分身の術!!」

「!!」

「なっ! なんだとォ!!」



二人は驚く。

分身の術が苦手なナルトが影分身の術を成功させ、尚且つ数えきれない程の自分の分身を出したから。



『どうしたってばよ。来いってばよ。オレを一発で殴り殺すんだろ、ホラ』



ナルトがミズキを挑発する。



「(ナルト……お前ェ……)」

『それじゃあ、こっちからいくぜ』



ドカ

バキ

バキ



「うぎゃあああああ」



ミズキの悲鳴が森中に響き渡った。



その様子を木の上から見ていた人物が一人。



「……いいなぁ、江狐。すごい愉しそう。……さてと……」



その人物……は、そう呟くと木の上から降りた。



* * *



「……ここから先は、私が引き継いでも宜しいですか?」

『!!』



突然現れた私に驚く二人。……まぁ、江孤は気付いてたようだけど。



「……アンタ誰?<! ずっと木の上にいたのか?>」

「お、おい! ナルト!」

「誰でしょう?<うん。江狐君、一人で楽しそうでしたね?>」



少し嫌味っぽく言う、私。



「それ答えになってねェってばよ!!<……そうか?>」



そんな私に、少し慌てる江孤。

そして、もう一人。ナルトの言動にイルカ先生が慌てていた。



「ミズキは、私が連れて行きますね<……それに、江孤。嬉しそうな顔をしてるよ?>」



ナルトのことを無視し、私は言った。



「無視すんなぁ!!<は?>」

「ナルト! 少し黙ってろ」



イルカ先生がナルトを注意する。

私はというと、イルカ先生に近づき目の前で止まる。



「あ、あの?」

「……意外と傷深いですね」



そう呟き、私は傷の手当てを始めた。



……手当てめんどくさいなぁ。医療忍術覚えようかな?

綱手ねぇを捜す……いや、それもめんどくさい。うん、独学でやろ。……江孤と蒼鹿実験台にして。



手当てをしながら、そんなことを考え、手当てが終わったことに気付く。



……あっ終わってる。……私、すげぇ!!



内心、自画自賛し、私は立ち上がった。



「……応急処置はしました。けど、病院にちゃんと行って下さいね? イルカ中忍」

「!! は、はい!!」

「それでは。……またね。ナルト君?<んじゃ、先行くね>」

「なんで、オレの名前!?<あとでな>」



私はミヅキを抱え、その場から立ち去った。



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