7話
江狐達から離れた場所で私は止まった。
「……ねぇ。起きて」
今まで担いでいたミズキを、荷物のように地面へ落とす。なにか鈍い音がしたが気にしない。
「……うっ……」
それと同時に、ミズキの呻き声が聞こえる。そして気絶していたミズキが目を覚ました。
「……っ……ん……? ……ここ何処だ……?」
「森の中」
「うわっ!? 誰だ!!」
……親切で答えてやったのに、人を化け物みたいに。
ミズキの態度に軽くムッとしたが、それを我慢し続けた。
「誰でしょう? まぁ、いいです。……あんた、ナルトにバケ狐って言いましたよね?」
「何故それを!?」
「これ、確か里の重大秘密事項ですよ?」
「…………っ」
「……全く。あんた運が良いです。来たのが、私で。この秘密を言った人、皆処刑されてるんですよ?」
「……そ、それじゃ!!」
今まで震えて、下を向いてたミズキの顔が上がる。喜びを隠せないようだ。
「はい♪ 私が、直々に殺してあげるんで、感謝して下さい?」
「ヒッ!!」
ひゅん!!
テグスを操り、ミズキの肉を引き裂いていった。
* * *
「…………なんてね?」
あはっ。嘘だよ? 嘘、嘘。
私の目の前に、尿を漏らし失神してるミズキがいた。
「私に、そんな権限有るわけないじゃん?」
失神したミズキを、ニヤニヤ笑いながら見下ろす。
あの希望に満ちた顔から、一気に絶望の淵に叩き落して、私に恐怖した顔。
……ゾクっとした♪
「……歪んでんな」
後ろから声が聞こえ、振り返ると江孤がいた。
「ありがと♪」
「はぁ?」
「歪んでるって、最高の褒め言葉だよね?」
「……うわぁ」
……引かれた。ひどい、江孤。
「……それより、イルカ先生は?」
「ああ、オレの分身とラーメン食ってる」
「たまには、本人が行ってあげればいいのに」
「アカデミーが終わってまで、表の口調で喋りたくねーよ」
「まぁ、確かにね。……ってか、ミズキどうしよう」
「なんで? そのまま運べば良いんじゃねぇの?」
「あいつ、漏らした」
「……げっ」
ドン引きしている江孤。
「……江孤」
「……なんだよ?」
「いい所に来てくれたね。……任せた!!」
「はっ!? ぜってぇ嫌だ!! ……って、!!」
江孤が言い切る前に、私はじーちゃんの部屋まで逃げた。
* * *
「お疲れ様!! ……って江孤。何を疲れておるんじゃ?」
「……別に」
「……そうか? ……なら、いいが……。では、江孤、帰っていいぞ。お疲れ様」
「私は?」
「おぬしは少し残ってくれ」
「え?」
じーちゃんの言葉を聞いた瞬間。
今まで不機嫌だった江孤の機嫌が良くなる。そして……。
「ざまぁ!」
「なっ!!」
「?」
「んじゃ、オレ帰るわ♪」
「裏切り者!!」
「言ってろ?」
「気を付けて帰るんじゃよ」
江孤が部屋から出て行くと、今度は私の機嫌が悪くなる。
……次会ったら、嫌がらせしてやる。
「……んで、何?」
「……率直に言うが、お前に頼みがある」
「内容によっては、ぶっ殺すよ?」
ビクッ
火影は部屋の空気が、ドス黒くなるのを感じる。
それを気付かないふりをして本題を言った。
「……は、ナルトが普段どんな食生活をしているか知っているか?」
「は? 知ってるけど……、それがどうかした?」
「ナルトと暮らし、食事を作ってやって欲しい」
「はい?」
「頼む」
……あれ? 新手の冗談かと……えっ……マジで?
じーちゃんの顔を見て、冗談ではないと悟る。
「……どうかのう?」
「……あー。なんで急に?」
「前々から気になってはいたんだが、言う暇がなくての忘れていたんじゃ……。
そうしたら、このところ特に酷くなってな……。こんな生活を続けたら、いくらナルトでも倒れてしまう。
……それに。おぬしも、そろそろ隣の部屋じゃなく、しっかりとした家に住んだ方が良いと思うんじゃ」
「いいよ? ナルトと同居」
わりと早く、決断する。
私がそう言うと、じーちゃんは嬉しそうな顔をした。
「本当か!」
「うん。荷物増やせるし? 予防大事だし? ……それに一度やってみたかったんだぁ」
「……何をじゃ?」
「ナルトくんと同居を? 嫌がらせし放題♪」
「……らしいのう」
「いつから行けば良いの?」
「早速だが、明日の任務が終わったら、直接行ってくれ」
「分かった。あと、このことは……」
「ナルトに言っちゃ駄目なんじゃろう?」
じーちゃんがニコりと笑い言った。
「正解♪」
「それじゃ、明日頼んじゃよ」
「分かった」
* * *
次の日、私は任務が終わると、すぐにナルトの家に向かう。
……ふぅ、疲れた。やっと、ナルトの家に着いた。……さて、呼ぶか。
けど、このまま行ってもつまんないかも………あっ良いこと思い付いた!
だとバレないように、私は17、18歳くらいの真面目そうな女の子に変化した。
……そして、ナルトの家のドアを叩く。
コンコンッ
ガチャ
「……はぁい……? ……誰だってばよ?」
「……あの、夜分遅くにすみません。私、ナルト君のお世話をするようにと、火影様に言われて来たと申します」
嘘は言ってないよね?
普段なら絶対使わない話し方。私は細心の注意をし、ナルトと話す。
「……はぁ!? ねーちゃん、冗談なら他所でやってくれってばよ!!」
「驚かれるのは無理ありませんが、冗談ではないです」
「……立ち話もなんだから、家の中入ってくれってばよ」
「はい」
家の中に入ると、ナルトが話しかけてくる。
「……んで、結局、ねーちゃんは何をする人なわけ?」
「簡単に言えば、住み込みの家政婦です」
「…ふぅん」
疑ってるね。……じゃぁ、秘密兵器を出そうかな。
……スッ……
私は持っていたカバンからある物を出す。
「?」
「これは、火影様との契約書です」
「……あっ。じっちゃんのサインがある! んじゃ、ホントにじっちゃんに頼まれたんだ!!」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしくな、ねーちゃん!!」
はい、宜しくお願いします。……ナルトくん?
* * *
あれから数日が経ち、私はまだとして過ごしていた。
そろそろバラしても良いかなと思いながら。
そして、夜になり私はナルトは夕飯を食べていた。
「ねーちゃんが作ったメシ、どれも美味いってばよ!!」
「ありがとうございます」
当たり前だよ? ……さてと。今、ナルト本体だし……。
「……ナルト君」
「ん? なんだってば?」
「……夜中に分身を置いて何処かへ行くようですけど、どこに行ってるんですか? ……帰ってくると、いつも血の臭いがしますし……」
「!! なっ……」
私はナルトの言葉を遮り言った。
「なんで、お前がそのことを知ってるんだよ!? ……ですか?」
「……っ!!」
そんなナルトの顔が面白く、私は笑うのを必死に堪える。
駄目、私! あともうちょい!
「……ご飯美味しかったですか?」
「え?」
急に話しが変わり、付いていけないナルト。
「お口に合いませんでしたか?」
「美味かった……ってばよ?」
素が入ってるよ?
「そうですか。それが聞けては良かったよ。ナルトくん♪」
そう言って、満面の笑みを見せる。
「え?」
そこで私の限界を迎えた。
「……ぷっ……ふふ……ハハ……アハハハハハッ!! もう駄目! 限界!!」
「…………」
ナルトは私だと気付いていないのか、それともが笑っている所を見たことがなくて驚いているのか、目を見開き私を凝視していた。
それから数分経ち、未だに私を見ているのに気付き、笑うのを止めた。
「……あれ? まだ気付いてないの? 私だよ、私!」
そう言って変化を解いた。
ボン!!
「ナルト♪」
「……!? なんでお前が!!」
「なんでって、私がってだけだよ」
「……はぁ。また からかってたのかよ?」
ナルトの顔が引きつっている。
「あはっ」
「お前なぁ……」
「……まぁ。でも、全部が嘘ってわけじゃないよ」
「は? じゃぁ、どの辺が本当なんだよ?」
「以外、全部かな?」
「は? 嘘だろ!?」
「ホント」
「(……誰か嘘だと言ってくれ……)」
どこか遠くを見ながら、ナルトは思った。
「よろしくね?」
「……ああ」
こんな生活も悪くないかな?
……と、ナルトが思ったのはここだけのお話。
「(……けど……。じじい、あとでシバく!!)」
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* * *
アカデミー編はここで終了!
楽しんで頂けましたか?
それでは、下忍編で!!