5話
試験も無事に終わり、私はナルトを探していた。
外には合格した生徒達が沢山いる。
その人並み外れた所に、ブランコに座っているナルトを見つけた。
「あっナルト!<演技大変ですねぇ>」
「…………<まぁな。その様子だと、お前も間に合ったようだな>」
「大丈夫……じゃなさそうだね<うん。それに、ただ合格するのも面白くないから、大音量出してみた♪>」
「…………<手の込んだことするな>」
一方は暗く、もう一方は明るい会話。
そんな、二人が会話していると、合格者の母親達がこちらを見て、なにかを言い始めた。
「……ねぇ、あの子よ………」
「例の子よ。一人だけ落ちたらしいわ!」
「フン!! いい気味だわ……」
「あんなのが、忍になったら大変よ」
「だって、本当はあの子……」
「ちょっと。それより先は禁句よ……」
「…………」
……なにも知らないくせに。
それでも、まだ私は我慢をしていた。……ナルトが、なにも言わなかったから。
「……一緒にいる子。頭可笑しいんじゃない?」
「あんな子と、一緒にいて」
この言葉にカチンと来る。……そして、気付いたら言っていた。
「……アンタらの方が、頭可笑しいんじゃない?」
「?」
ナルトが、不安げに私を見る。
「それに、私が誰と居ようと、アンタらには関係ないでしょ。……たくっ。一々、影で言ってんじゃねぇよ。暇人共が」
「なっ!!」
「これだから、親の居ない子は!!」
「アンタらみたいなのが親だったら、居ない方がマシ。それに、アンタらより、私の方がよっぽどマシだと思うけど?」
「! もういいから……」
ここで、ナルトが私を止めに入った。
「なっ! ……わかった……」
私は渋々言うことを聞く。
そして、ナルトに手を引かれ、その場を離れた。そのとき、あの母親達がぐちぐち言っていたが、なんとか堪えた。
* * *
しばらく歩き、その場から離れると、繋がれていた手をパッと離れ、素のナルトが話しかけてきた。
「……お前さぁ。なにやってんの? あんなの、言わせておけば良いんだよ」
「……だって」
「だってじゃねーよ。こっちは慣れてんだから」
そう言ったナルトの顔を見ると、笑っていた。
私はその笑顔が辛かった。
……こんなの慣れるわけないのになぁ。
けど、ナルトが笑っているから、私も笑うことにした。
「……全く」
苦笑いしか出来なかったけど、それを見て、安心したようだった。
……すると、後ろから誰かに呼ばれた。
「……ナルト君、ちゃん」
『ミズキ先生!!』
* * *
ナルトとミズキが話している。私はそれを、静かに聞いていた。
「……イルカ先生は真面目な人だから……。小さい頃に両親が死んで、何でも一人で頑張ってきた人だからね」
「だからって。なんで、オレばっかり」
ナルトが少し不満げに言う。
「自分に似てると思ったんじゃないのかな。君には本当の意味で強くなってほしいと思ってるんだよ。
きっと。イルカ先生の気持ち、少しは分かってあげられないかな……? 親のいない君だからこそ……」
「……でも……卒業したかったんだぁ」
「…………っ!!」
二人の会話を聞きながら、私は必死に笑いを堪えていた。
……ヤバイ。笑いそう!! 笑うのはマズい。耐えろ、私!!
「(……なにしてんだ? このバカ)」
内心、呆れながら私を見てたナルト。
「……仕方がない」
「え?」
「君にとっておきの秘密を教えよう」
* * *
じーちゃんに報告しに行くと、そこにはシカマルもいた。
「よう」
「うむ。帰ってきたな」
「おう」
「…………っ!!」
そこで限界を迎えた私。
「……も、もうダメ……!! アハハハハハハッ!! なにあれ? ヤバい! 面白過ぎ!!」
私は床に座り込んで、床をバンバン叩く。
そんな私の様子を、じーちゃんとシカマルは驚き、ナルトは呆れて見ていた。
そして、最初に口を開いたのはじーちゃんだった。
「……どうしたんじゃ? あやつは……」
「……なんで笑ってるんだ? アイツ……」
「……お前、まだ笑い堪えてたのかよ。アイツ、オレがミズキと話してるときから、笑いを堪えてたんだよ」
「だ、だって! ナルトの演技がアカデミー賞もんなんだよ!?
ミズキは、こっちが正体に気付いてるの知らないから、真剣に話してくんの! それが、また滑稽で!!
あーーホント、面白かったぁ!! あっヤバイ! 笑いすぎて、お腹痛い!!」
「……お前歪んでんな」
「……ミズキか哀れだ。……あっでも、ナルトの演技は、オレも感動もんだと思う」
これに関しては、シカマルも同意してくれる。
「でしょ!?」
「ああ」
「……お前らなぁ」
本人はどう反応すれば良いのか分からず、困ってしまった。
* * *
その後。
笑いが止まったり、再発したりの繰り返しで、やっと止まってくれたのが40分経ってからだ。
私は深呼吸をし、じーちゃんに言った。
「……それで、じーちゃん。私にも何かすることある?」
「うむ。おぬしには、ナルトのフォローと、あとの処理を任せたい」
「承知しました」
『…………』
そんなに、三人は不安になった。
が、なにかする。そんな気がしたからだ。
「<……オレ。アイツが、何かしそうで恐いんだけど>」
「<ナルト、頑張れ……>」
「そーいえば、シカマルも、ナルトのフォローするの?」
「ん? いや、オレこの後、任務」
「じゃぁ、シカマルの分まで頑張る♪」
「……ま、任せた?」
「。程々にしとけよ?」
「……程々ねぇ?」
その言葉に、ナルトは余計不安になったが、その不安を押し込め言った。
「……ま、まぁ、そろそろ行くか。じっちゃん巻物借りるぞ」
「うむ。任せたぞ」
「二人共、頑張れよ」
「適当にね?」
「シカマルもな」
二人は窓から出て行った。
「だから、窓から出入りするなと、何度言ったら分かるんじゃ!」
後ろから、じーちゃんの声が聞こえたけど、私達は無視することにした。
じーちゃん。いい加減諦めた方がいいよ? それ守る気ないから。
* * *
森に着くと、早めに着いたのか、まだミズキの姿がなかった。
「江狐」
「あ? なんだ?」
「ねむい」
「は?」
「寝ていーー?」
「……お前……」
「じーちゃん、人使い荒いんだもん」
「……はぁ。まだ、ミズキ来なそうだし、寝てても良いんじゃん?」
「やった♪ んじゃ、来たら起こして?」
「わかった……って……」
江狐が返事をしたとき、は既に寝息を立てていた。
「……寝るの早過ぎだから」
一見、呆れたような感じだったが、江孤の顔は笑っていた。
そんな、どこか和やかな二人だが、が江孤に置いてかれるのは、それからすぐ後のこと……。
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