賢者の石 4話







4話







「君、本当にグリドール?」

「組分け帽子にも微妙に反対された。どっちかっていえばスリザリン向きらしい?

たまにスリザリンの人に「今ならまだ遅くないからこっちおいで!」って」

「勧誘……」



「フツーに無理でしょ」とケラケラ笑えば、彼は初めて会ったときみたいになんともいえない表情をしていた。



「まぁ私が""だからってのもあるだろうね。

それに引き換えリドルは迷うことなくスリザリンって感じ! それ以外ない……って、リド、え? 本物!?」

「おそ、今更?」



呆れたように私を見てくるけど仕方ないじゃん!

夕方からいくら呼んでも出てきてくれなかったし、少しメルヘンチックな夢か幻覚だったのかな?

……で、片付けようとした矢先の再会だからね?

しかも。

不満は言うけど、泣いてないこのタイミングだよ?



「本物だよ。まさか数時間で忘れたの? 痴呆が始まるには早いと思うけど?」

「……嫌だなぁ。リドルさんのこと忘れる訳無いじゃないですかー」



シレッと嘲笑込みで言い返してきたリドルに本物だと悟った。

会って1日未満だけど。

……なんで私の周りは口系に強い人が多いのかな、実は密かに悩みだったり。

アルバスだって普段は好好爺だけど、絶対違うよね。

それに新たにリドルまで加わって……はは……はぁ。



。ここ違うよ」



レポートのある文を指差すリドルにきょとんとする。

さっきから私のレポートを覗き込んでいたけど、下らないことを考えていた間に参考書を持ち始めていた。



「教えてくれるの?」

じゃ朝になっても終わらなそうだしね」

「……え……」



今日徹夜かも。確かに自分で言ったけど結構、冗談だったんだけどなぁ。



「ほら、時間ないんだから、さっさと羽ペン持って」



保護者みたい。ってか。



「なんでないの?」

「馬鹿なの?」



そして訪れた頬への痛み、再来。



「外に行ってる奴らが帰ってくるまでしか、僕は教えられないからに決まってるでしょ」



い、痛い。リドルさんすごい痛よ、コレ。



「それくらい自分で考えてくれる?」



どんどん強く引っ張られる頬。手加減しよ? ねぇ?



「へふひょにぇー」



ある程度引っ張ったら満足したらしく放してもらえた。

鏡見てないから分からないけど、赤くなってんだろうなぁ。







*







「で、次はこれ」



すごい早いペースで片付いていくレポート。

リドルは教えるのが上手かったみたいで、しかも解りやすい。

たまにこの本役に立たないよ、とかも教えてくれた。



「あ、これ書いたら終わりだから」

終わる頃にはその手に参考書なんて持ってなくて、どうやら暗記したみたい。



「………………終わったーっ! ありがとう、リドル!!」



ギュッと腕に飛び付けば鬱陶しそうに「はいはい」って。

夕食後から談話室に居座って数時間。

リドル出て来てくれなかったらこのままでしょ? 考えただけでゾッとする!



、そろそろ離して?」



言葉だけ聞くと優しげだが、どこか急いで引き剥がしに掛かってくる大人……では、ないか。

どうでも良いけど地味に痛い。



「イタッ、リドル変」



不満を言ったからってのは有り得ないけど、パッと解放してもらえた。それと同時か否か。



ガヤガヤ騒ぐ声が入り口の方から聞こえてきた。

ああ、帰ってきたんだな、とぼんやり悟ってリドルをちらり見した。



「だから?」

「さぁ? またね、



薄く笑みを浮かべて、そっと囁くリドルにハッとなり、慌てローブの袖を掴むと小さく目を見開いていた。



?」

「お兄さん、お兄さん。実は私、一人部屋でほぼ見付かる心配なかったり?」

「え?」

「じゃ!」



たまには良いよね?と悪戯っぽい笑みを浮かべて、帰ってきた彼女らをお出迎えをしに行くと。

「あなた達はどこに目を付けてるの?」とハーマイオニーの突っ掛る声。

帰ってきた皆は何故か全力疾走後みたいにぐったりしていて息も絶え絶えな様子だった。



「あなた達、さぞかし満足でしょうよ。

もしかしたらみんな殺されてたのかもしれないのに――もっと悪いことに、退学になったかもしれないのよ。

では、みなさんお差し支えなければ、休ませていただくわ。あら、

「おかえり、ハーマイオニー」

「待っててくれたの? ごめんね、今夜は疲れたからもう休むわ」

「おやすみー」



それだけ言うとハーマイオニーは女子寮に行ってしまった。



「……お差し支えなんかあるわけないよな。あれじゃ、まるで僕たちがあいつを引っ張り込んだみたいに聞こえるじゃないか、ねぇ?」

「彼女死ぬより、退学の方が怖いのかな?」

「ウィーズリー君、ポッター君」



小声で呼ぶこっちを見てくれたので、しぃー、と人差し指を口に当てた。



「まぁまぁ」

さんは彼女の味方なの?」



味方って。まぁどちらかといえばハーマイオニー? 友達だしね、とは思いつつ。



「私は傍観者かな? まぁ、今夜は皆気が立ってるから、もう休んだ方が良いよ」



それでも不満そうな二人をなんとか宥め、渋々男子寮に向かった彼らに苦笑しながら手を振った。

……そういえばさ。皆が帰って来たときから気になってたんだけど。



「ロングボトム君、出るとき居たっけ?」



素朴な疑問を床に座り込んでいた本人に投げかけると、彼の目からポロポロ涙が溢れ落ちた。



「えーと?」

、聞いて!」

「は、はい」



どうやらロングボトム君、治療を終えて帰ってきたは良いけど合言葉を忘れて、誰か来るのをひたすら隠れて待っていたらしい。

やっと寮に入れると思ったのに太った婦人居ないって、何!?と、涙ながらに語ってくれた。

まだ続きそうだったけど、段々、可哀相になってきちゃって「もういいよ」って止めた。



「お疲れ」

背中をポン、と軽く叩くと「ありがとう!!」って抱き付かれた。









*



2014.01.26