1話
あー眠い……。
早く報告して寝よう。
……カサッ
そんなことを考えていると、どこからか物音が聞こえた。
微かな血の臭いと共に……。
……あんまり行きたくないなぁ。
私はそう思いながらも、仕方なく行くことにした。
……あれ? あの人怪我してる?;
* * *
青年は敵に追い詰められていた。
「おい! さっきまでの余裕はどうした?」
ニヤニヤしながら敵の忍が近づいてくる。
「……うるせぇよ(ちっ油断した。しかも向こうは調子に乗ってるし……。)」
敵は青年を無視して続けた。
「殺されるのが恐くて震えてんのか?
まぁ、すぐには殺してやんねぇよ。お前には仲間を殺された恨みがあるからな!!」
……ピタ……
「忍者が、油断なんかしちゃだめなんですよ?」
私は後ろから敵の忍に近づき、首にクナイを突きつけた。
『!!』
二人は突然現れた人物に驚く。
そして、クナイを突きつけられた忍が騒ぎだした。
「だ、誰だ!お前は!!」
「……うるさいなぁ。だから殺されるんですよ」
「は?」
……ボタ
……ボタボタ……
どういう意味か聞き返そうとしていた敵の身体が音を立てて落ちていく。
敵の忍が死んだことを気にも止めず、私は怪我をしてるであろう青年に近づいて行った。
「大丈夫ですか?」
「…………っ(……コイツいつからあそこにいた?)」
青年は警戒していた。
そこは気にしないで、私は青年が怪我していないか見ていた。
「あーー、やっぱり怪我してますね。しかも意外とひどいし」
そう呟いて、青年の怪我の治療を始めた。
* * *
治療が終わり、今まで呆気にとられて何も言えなかった青年が口を開いた。
「……お前は何者だ」
青年は突然現れて、敵の忍を殺し、尚且つ自分の怪我を治療したに不審を抱いていた。
……疑問系じゃないのかよ。
内心、溜息を吐きながら、私は青年の問いに答えることにした。
「私は通りすがりの木の葉の忍者ですよ。【うずまき ナルト】君?
……いや、今の格好なら火影様専属の暗部の【江狐】さん。……ですかね」
「!! なんでその名を……」
江狐はすごく驚いていた。
自分が暗部だということは、一部の人間しか知らないことだったから。
「アハハ。何ででしょう?」
「なんで、オレのことを知ってんだ?」
何度も聞いてくる江孤に、私は微妙に楽しくなって確かめてみた。
「そんな気になりますか?」
「ああ」
すぐに頷く江狐。
「あるスジからの情報です♪」
「えっ!?」
「しかも、君がよく知る人物」
「は? ってか、お前ホントに何者だ?」
江狐は困惑していた。
「秘密ですよ♪ そんなに気になるなら自力で探せ? では、また会えたら」
* * *
あの変な女が行ったあとも、オレは困惑していた。
「……なんなんだよ、あいつ。
とりあえず、オレの情報を流したであろう奴のとこに行くか。
はぁ。……じじいーーーーっ!!」
* * *
私は木の葉に着くと、眠い目を擦りながら火影の部屋に向かい任務の報告に行った。
「じーちゃん任務終わったよー」
「おお。、ご苦労じゃったな」
「疲れた。あーそうそう、さっき江狐さんに会ったよ」
「江狐に?」
「うん。怪我してて、殺されそうになってたから助けてあげた。」
じーちゃんは江狐さんが怪我をしたことを知り驚いていた。
「あやつが怪我を?」
「うん。治してあげたけどね。……あっ。じーちゃん、江狐さんに脅されると思うから気をつけてね」
「は!?」
それはいったいどういう意味だと聞こうとしたら、が先に言った。
「んじゃ、おやすみ〜」
「…ああ」
私が言った忠告で、じーちゃんの顔は汗だくになっていた。
「あーあと、江狐さんが来て、私のこと聞いてきたら暗部名しか言わないでね。……もし言ったら分かってるよね?」
の顔は笑っていたが、目は笑ってなく、手の中にはクナイが握られていた。
……ゾッ
タラリ……
火影はさっきより自分の汗の量が増えたことが分かった。
「……はは」
笑うしかない。
どっちに行っても自分の生死が危うい気がした。
はそれだけ言うと満足したのか、隣の部屋に帰って行った。
* * *
私が隣の部屋に帰って、寝始めてから数十分後。
じーちゃんの部屋から大きな音が聞こえてきた……気がした。
……ぅん……うるさい。
……まぁ、いいや気にしないで寝よう。
……ん? この気配。……一応変化しておくか。
用心のため変化して、また寝ようとすると……。
「おい!! オレの情報をアイツに言ったのはじじいか!? それより、アイツは何者なんだよ!!」
「お、落ち着け、江狐(が起きたらヤバい。この部屋が壊れる!!)」
……しかし、火影の願いも空しく、江狐の声が大きくなっていった。
この音は当然、隣の部屋に聞こえていた。
……マジでうっさいな。
隣の部屋があまりにも煩くて目が覚めた。
そして、ついにキレた。
バンッ!!
『!!』
二人は最初、とても驚いていた。
だが、火影の方は誰か分かった瞬間、苦笑いに変わり。
「(……終わった。……明日は片付けが大変そうじゃな)」
しかし、江狐の方は状況についていけなかった。
そして……。
「こんな夜中に騒いでんじゃねぇーよ!!」
ドカッ!!
がそう言って蹴りをいれた。
江狐はその蹴りが見えなくて、まともに喰らってしまう。
「いってー!! 何すんだよ!!」
「アハハ、ざまぁ! 人の睡眠妨害するからだ!」
「隣で誰か寝てるなんて、誰も思わねぇーよ!!」
「は? なに逆切れしてるんですか? 現に私が寝てただろーが!!」
「してねぇーよ!!」
「してるじゃん!!」
「してねぇー!!」
「してますー!!」
「してねー!!」
このままでは、いつまで経っても、終わりが見えなかったので火影が止めに入る。
「……お前ら、もうちょっと声の音量落とせ。そして落ち着け」
『うるさい!! じじいは黙ってろ!!』
二人が声を揃えて同じ事を言った。
「………」
そこで、一端、落ち着いた江狐があることに気付く。
「……あっあれ? そういえばお前さっきの……」
「は? ああ。江狐さん今、気が付いたんですか?」
は何を今更という感じで言う。
「さっきはお面被ってたし」
「あー、そういえばそうですね」
「まぁいいや。じっちゃんコイツ誰?」
火影は二人の様子を微笑みながら見ていたら、急に話しを振られ、江孤の問いに答えられない。
「は?えっ……」
「」
その問いにが答える。
「じーちゃん歳?」
そうニヤニヤ笑いながら。
「!」
「まぁ、いいや。眠いし帰る。じゃあね、おじい様♪ それでは、江孤さん?」
「……ああ」
パタン…
今度は静かにドアを閉め、が隣の部屋に帰って行った。
「あやつめ……」
「アイツ、ここに住んでんのか?」
「そうじゃよ。おぬしもそろそろ帰りなさい。今日もアカデミーがあるんじゃろ?」
「ああ。じっちゃんまたな」
江狐も行ったあと、火影が呟く。
「……あの二人の感情を見るのは久しぶりじゃな。
この出会いが、二人にとって良い出会いになると良いんじゃが……。」
* * *
「……ふわぁ……。良く寝たなぁ」
日付が変わって、次の日の夜中。
は、江孤達と別れてからずっと寝ていたのだ。
そして起きたら、することがなく、
ヒマだったので、隣の部屋に居るじーちゃんの所に行っってみることにした。
バン!
「じーちゃん、ハロー♪ ……あれ?」
「あっ」
「……?」
部屋に入ると、江狐ともう一人がじーちゃんと真面目な話しをしていた。
「おお! 、いい所に来たな」
じーちゃんの言葉を聞いて、私は何故か嫌な予感がした。
……タイミング間違えたかも。
「実は禁術の巻物を奪われてな。それを江狐と蒼鹿と一緒に奪い返しに行って欲しいのじゃ。
……それと巻物の中身を見た者の暗殺を任せたい」
……予感は的中。
来なきゃ良かった。……はぁ。仕方ない。
「……いいよ。行っても」
「本当か!」
「……ただし、この人達と一緒に行動しないといけないなら、行かない 」
「……何故じゃ?」
喜んだじーちゃんの顔が、一瞬にして曇った。
そして内心、火影はの態度に驚いていた。
「(蒼鹿の方はなにもないが、里の者はナルトを見て毛嫌いする。
しかし、はそういうこと気にする子ではないと思っていたんじゃが……)」
「(……はっ。コイツも他の奴らと同じかよ)」
「(……つーか誰だよ?)」
江狐はも里の奴らと同じだったということに驚きもせず、鼻で笑っていた。
「……何か勘違いしてない?
先に言っとくけど、別に江狐さんが嫌だから。
……とかいう馬鹿げた理由じゃないからね」
『!!』
「じゃあ、なぜ嫌がるんじゃ?」
「だってさ、江狐さん弱いじゃん。それは君だってそうですよ?
江狐さんと同じ、火影専属の暗部の【奈良 シカマル】君?
まぁ、今の場合は【蒼鹿】さんって呼んだ方がいいですかね。
私は足手まといは要らないんですよ。邪魔なだけですから」
『……』<
「(らしいのう……)」
火影はそう思いながら、を見て微笑む。
『(なんでコイツ、オレの名前を……!?)」
蒼鹿はに自分の名前を言っていないのに、知っていることを驚いていた。
「(……こいつは、里の奴らとは違うのか?)」
江狐はのことを信用してもいいのか、どうか分からなかった。
「(……あれ? ちょっと待て)」
「<なぁ、江狐。なんか引っかかんねぇか?>」
二人は他の人達に聞こえないように、隠話で話しだす。
「<ああ。オレもそう思うんだ……>」
二人はしばらく考える。<
そして同じ答えにたどり着き、同時に言った。
『オレらが弱いってどういう事だよ!!』
「そのままの意味ですよ♪」
「はぁ!? オレがいつ弱かったんだよ!!」
「そういうアンタはどうなんだよ!!」
「誰でしたっけ? 敵に殺されそうになってた人?
それに君らと比べたら誰だって強いと思いますよ?
てゆーか、じーちゃん。よく、こんな腕で専属の暗部なんかにしたね。そんなに里の忍不足激しいの?」
のあまりの言いぐさに、二人は固まり、火影は苦笑する。
『なっ!!』
「…………」
そして、すぐさま江狐が反論する。
「あの時は、相手が弱いと思って油断してたんだよ!!」
この言葉には慌てずに言い返す。
「油断している方が駄目なんじゃないんですか?
……それに、なんで君ら如きが暗部になれたかが、不思議なんですけど」
ガンッ!!
その言葉に江狐が切れ、近くにあった壁を殴りつけた。
「……んだと、テメー!! あんま調子にのんじゃねーぞ!!」
そしての胸倉を掴みかかった。
「別に調子になんか乗ってないですよ。
ってか、ホントのこと言われて切れてるんですか?
……はぁ。だから、お前らみたいな奴ら嫌なんだよ」
『!!』
そろそろ本当にヤバいと思った火影が、二人を止めに入る。
「! 江狐!」
ビクッ
その声に二人が止まった。
「……江狐はを放せ」
「……ちっ」
火影に言われて、江狐は渋々、を放した。
「。おぬしもその辺にしておけ」
「すみません。言い過ぎました」
自分でも言い過ぎたと思い謝った。
「……別にいい。じっちゃん、こいつはホント何者なんだよ?」
「ああ。里でこんな奴、見たことないぜ」
今まで黙っていた蒼鹿もそれに同意する。
……これ以上、隠すのは無理かな。
「……余計なこと言わないなら、言っていいよ」
「わかった。もおぬしらと同じ、わし専属の暗部じゃよ」
『!!』
火影の言葉に二人は驚く。
「でも、専属の暗部ってオレらだけじゃなかったか?」
疑問に思った蒼鹿が聞いてきた。
「違うのう」
「あっ! いつも単独でしか任務を受けない奴がいるって、前じっちゃんに聞いたことがある!」
「そう。それがじゃ」
「けど、なんで、単独でしか受けねーんだ?」
「お前は人のこと言えねぇけどな」
江狐が言った瞬間、蒼鹿がツッコむ。
「蒼鹿うるさい!」
「さっきも言ったでしょう? 足手まといになって邪魔なだけですから。
……それに他人はすぐに裏切りますからね。私は自分しか信用してないんですよ」
『…………』
そのの言葉に皆、黙ってしまった。
「(オレと似てる……。コイツもオレと似たような、体験をしたことがあるのか?だから……)」
「(……オレと会う前の江狐と同じだな)」
「(……。おぬしはまだ、あやつらのことを気にしておるのか……)」
皆が暗くなる中、は火影に声をかけた。
「……それでじーちゃん。任務の場所ってどこなの?」
「岩隠れの里の近くじゃよ。……引き受けてくれるのか?」
「うん。それに江狐さんと蒼鹿さんの実力も見てみたいしね」
「あ? お前こそ、オレらの足引っ張んなよ!」
「はっ。勝手に言ってて下さい」
は鼻で笑ってから言った。
「(……ぜってぇ、こいつには負けねぇ)」
「(あー、めんどくせぇことになっちまったな……)」
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