一賊の日常?−バレンタイン編−
*一賊の日常?―バレンタイン編―*



「なにを作ろうかなぁ」



スーパーのチョコ売り場で悩んでいる少女が一人。
理由は今日がバレンタインデーだから。



「誰にあげよう? とりあえず伊織ちゃんに軋兄と……微妙に嫌だけど……双兄でしょ? あと絶対あげたい人は人識くんだ!」



そう言って、また何を作るか考えだした彼女の名前は零崎月織。
……だが、ほとんどの人が彼女を月織とは呼ばず、元々の名前のと呼んでいた。
こんな普通の少女に見えるも、さすが【零崎】というだけあって彼女も殺人鬼だ。だから、人を殺すことにもなんとも思っていない。
むしろ人を殺すのは、生活の一部だった。
ある意味は、人識や双識や軋識よりも……いや、一賊の中で一番容赦がない。


まぁ、今日はバレンタインなんでこの辺にしときましょうか。


はいつも人識達といるわけではなかった。
人識と同じで、1年中放浪の旅をしていた。そして一定のペースで帰ってくるという感じだった。今回もそんな感じで帰ってきたのだ。



「よし、今回はチョコレートケーキにしよ!」



は作るものを決めたようで、早速材料をカゴの中に突っ込んでいく。
そして会計を済ませると家に帰っていた。



*



「みんな早く帰って来ないかぁ」


ケーキを作り終え、ラッピングも終わらせると私はソファの上でゆったりしていた。時間はまだ4時くらいで、まだ皆が帰ってくるまでしばらく掛かりそう。



「ちょっと寝ようかな」



*



数時間後。



ちゃん、起きてくださいよぉ」



……ん〜、伊織ちゃん? まぁいいや……。



伊織の声がした気がしたが、それを無視してまた寝始める。
すると、すぐに今度は軋識の声がした。



! さっさと起きろっちゃ!」



……今度は軋兄〜? でも、眠い……。



軋識の声も無視して、私は睡眠を続行した。
ここで起きたら気持ちよく起きれただろう。……しかし、世の中そう上手くはいかないもので……次に起こしに来た人は双識だった。


「……まったく早く起きなさい。ちゃん」



今度は双兄〜? つーか、いい加減起きなきゃな〜。
そんなことを考えていたが、まだ少し眠くて寝ていたらとんでもないことをほざきやがった。



ちゃん。早く起きないと犯しちゃうぞ」



は?



驚いて固まっていると、双兄がどんどん近づいてくる気配した。
……すると救いの声が。



「調子にのんな、クソ兄貴!」



人識くんの声がする。そして私も慌てて起き上がった。



「妹相手に何やろうとしてんのさ!? この変態!!」



そう言って私は双兄をおもいっきり蹴り飛ばした。
突然の攻撃にあまり受身をとれなかった双識は壁に打つかって、そのまま気絶してしまった。



「まったく、レンはアホっちゃね」

「ホント、アホですね。てか、バカ?」

「つーか、救いようがねーほどアホ。このままくたばっても平気なんじゃねぇ?」



三人は双識が気絶してるのをいい事に好き勝手言っていた。



「てか、大丈夫か?」

「んー? 平気だよ。それより久しぶり、人識くん!」

「ああ、久しぶりだな、

「あとで、良い物あげるね」

「良い物?」

「あとでのお楽しみ〜♪」



それだけ言うとは次々に声をかけていった。



「軋兄も久しぶり。そしてただいま〜」

、お帰りだっちゃ。今回は珍しく静かだったようっちゃね」

「あはは……。伊織ちゃん久しぶり! いいお土産買ってきたよ」

ちゃん、お帰りなさいですぅ」



……そして最後に。



「双兄も、ただいま。いい加減、起きてんでしょ?」

「うふふ、やっぱり気が付いてたようだね」

「当たり前でしょう? そうそう、皆にプレゼントがあるんだ」



そう言って、は台所に向かった。
そして戻ってくると手に包装された何かを持っていた。



、それなんだ?」

「バレンタインだからチョコケーキ! はい、人識くん!」

「お〜、さんきゅっ♪」



あはっ良かったぁ。
人識くんはすごい嬉しそうに笑ってくれた。



「なぁ、。これ本……」



人識くんが何かを言おうとしてた気がしたが、私はそれに気付かずに伊織ちゃんにチョコを渡した。


「はい、伊織ちゃん♪」

「…………」

「え? 私にもくれるんですか? ありがとうございます!!」

「当たり前じゃん! はい、軋兄も♪」

、ありがとだっちゃ」

「…………」

「(……あーあ。人識は哀れっちゃね)」



呆然と固まっている人識を見て軋識はそう思った。……そして、最後に。



「はい、双兄!」

「おぉ、ありがとう、ちゃん!! お兄ちゃんは嬉しいよ!」



そう言いながら双識はに抱き着いてきた。



「どさくさに紛れてなにすんだ!クソ兄貴!!」



私はポケットからナイフを取り出して、双識を切りつけようとしたが、すぐに。



ちゃん、いくらお兄ちゃんが変態でも殺人はダメですよぅ」



伊織が止めに入った。



「……伊織ちゃん、お兄ちゃんを変態扱いしないの」

「ホントのことじゃないですか」
「レンもその辺にしとけ。、レンを斬ったら部屋が汚れるから止めろっちゃ」



軋識も止めに入ったので私は素直に止めた。



そしてその様子を遠くから見てた人識は、が皆にチョコを渡してる所を思い出して。



「(……かはは、傑作だっつの。つーか虚しくなってきたわ)」



苦笑していた。



*



夜中。私は人識くんの部屋のドアをノックしていた。



「人識くーん今いい?」

「ああ、勝手に入っていいぞ〜」
「お邪魔しまーす」

「んで、どうした?」



彼はベットの上で本を読んでいたらしく、それを閉じて用件を聞いてくれた。



「これお土産!」

「おっ、ナイフじゃん!!
でも、なんか血付いてねぇ?」

「あれ? まだ付いてた? 買ったときに試し切りしてみてさぁ」
らしいな。でも、ありがとな!」



そう言って人識くんはニッコリ笑った。



*



が部屋から出て行った後、俺は貰ったチョコケーキを食べていた。



「……甘くてうめぇ」



笑いが止まらない。でも、それはケーキだけじゃなくてナイフの事もあった。



「やべぇ、笑いとまんねー……でも仕方ねーよなぁ」



そう言ってから貰ったナイフを眺めていた。



*



そしての方も人識が喜んでいる所を思い出して嬉しくなった。



「なんか人識くんは、他の誰よりも大事なんだよなぁ……なんでだろ?」



私はその理由を少し考えたけどすぐに止めた。



「まぁ、いっか」



案外それは恋の始まりかも?



*

再up
2012.11.7