ちょっと甘さを求めてみようか


「……さて、どうしようか?」



汚く、薄暗い部屋の一室で、少女がポツリと呟いた。






ちょっと甘さを求めてみようか






これはの失踪と一枚のメモから始まった。

月が見える真夜中。オレは任務が終わり、じっちゃんの部屋にいた。

ふと、最近アイツを見てないような? と思い、じっちゃんに聞いてみることに。



、最近居なくねぇ?」

? あやつなら今、任務が休みじゃよ」



ん? ……あーそういや。最後に会った日……。



「っしゃー!! 明日から休みだーっ!! じーちゃん、脅して良かった♪」



……物騒なことを言いながら、部屋で踊ってたような……。



「家で寝ているんじゃないのか?」

「いや? 家にはいねーよ」

「そうじゃのう……なら、放浪でもしているんじゃないか?」



もうそんな時期かと、しみじみと言うじっちゃん。



「はっ? 放浪??」

「ナルトは初めてか? あやつは年に一度、ふらーっと何処かに行くんじゃ。黄昏れるのが好きらしくての」



普段、無駄に寝てるくせに……。

インドアなのかアウトドアなのか分かねー奴。



「休みが終わる頃には帰ってくるじゃろ」

「……そうだな」



この話しをじっちゃんとしたのが、一週間前。

んで、一週間後がコレ。



「……なぁ、アイツまだ帰って来ねーの?」

「そういえば遅いのう。毎年、数日で飽きて帰ってくるのに」



……飽きたって……。いっそ、家で寝てろよ。



「おかしいのう。最近、の名が入った妙なメモも来るし……」

「妙なメモ?」

「言ってなかったか? コレじゃよ」



そう言って、じっちゃんがメモをオレに渡す。オレはそれを受け取って見ると。



【えへっ助けて? 



……と、の字で書いてあった。



「……じっちゃん。コレ来るようになったの何時からだ?」

「一週間前かの?」

「早く言えよ、ジジイ!!」



そう叫び、オレは窓から外へ飛び出した。



なんでオレの周りには、シカマル以外まともな奴が居ねーんだよ!?

つーか気付けよ、ジジイ!!



メモには御丁寧に場所が書いてあった。

の安否が気になり、すぐに向かったのだが、アイツ、オレが行ったらどんな感じだったと思う?

オレはお前に一言言いたい。

……女として、それってどーよ?



* * *



それは森の中にあった。

周りは薄暗く、見た目からして寄り付きたくない建物。



台風が来たら、一発で壊れんじゃね?



そう思いながら、中に入る。

雨漏りしているのか、たまに水溜まりを踏みながら一部屋、一部屋確認しながら奥に進む。

そして奥の部屋に行くと、捜していた人物を発見した。……ベッドの上で寝っころがっているを……。



「……は?」



思わず声が洩れる。



「ん? あっナルト!! 久しぶり!」



なんでベッドの上でゴロゴロしてんだ? コイツ。

なに暢気に返事してんだよ。緊張感の欠片もねーな、おい。



「……? お前誘拐されたんだよな?」

「誘拐? ……あー多分?」



なんで疑問形なんだよ。



「一応聞く。……帰っていいか?」



本気で帰りたいんだが……。

そりゃさ、泣けとまでは言わねーよ? そんなの求めたって無駄だしな。だし。

けどさ、けどさ、それなりの態度ってないか? 仮にも誘拐されたんだよな?

普通、こんな暢気にゴロゴロしないよな? ……女じゃねーよ、コイツ。……ってか、オレの心配を返せ!!



「ダメ」

「……なんで?」

「お腹刺されちゃった♪」

「……は?」



幻聴か? なんか、とんでもない発言を聞いたような?



「出血し過ぎて動けなかったり?」



そう言って、ニッコリと笑う

そんなコイツを見ると、普段から白いの肌が、青白くなっている。



「!! 早く言えよ!?」

「聞かれなかったし?」



ゴンッという鈍い音が辺りに響く。



「……っうぅ……」

「重要なことは先に言え」

「……はい」

「……ったく。腹出せ」

「変態」

「もう一発、殴ろうか?」

「遠慮しとく♪ けど、止血はしたよ?」

「ならいいか。治療は里についてからで……」

「誰だ?」



突然、部屋に響く声に話しを遮られ、後ろを振り返るとそこには中肉中背のおっさ……男がいた。



?」

「あー犯人帰ってきちゃった」



飄々とオレの問いに答える



……だから、なんでお前は余裕なんだ……。



ちゃんって言うのか! 中々、名前を言ってくれないからおじさん困ってたんだよ」

「誘拐犯に教える名前なんてないですから」

「冷たいなー、そこが良いんだけど……」



変態!!



を見ると、顔をしかめていた。



……ああ。なりに大変だったんだな……。



その後もしばらく、とおっさんが言い合っていたが、嫌気がさしたのだろう。

がボソッとつぶやく。



「……殺して良い?」

「それ犯罪」



不満だったのだろう。舌打ちされた。



「おっさん」

「誰だお前?」



以外興味がないのか、そういえばいたなという風にオレを見る。



「コイツの迎え。返して貰うから、おっさんは刑務所行きな」

「なにを言っている!? ちゃんはずっと此処にいるんだ!!」

「誰がいるか! それに気安くちゃんって言うな!!」

「……落ち着け、



話しが進まねーから。



「……まぁ、おっさんに拒否権ないから」



そう言って、素早くおっさんに向かう。

おっさんはオレが消えたと思いキョロキョロと周りを見回していた。

後ろに行き、トンッと首に手刀をすると、おっさんがガクッと地面に落ちる。



「……はい、終了」

「トドメさして良い?」

「却下」

「なんで!?」

「却下」



がぎゃあぎゃあ言っていたが、それを無視して持っていた縄でおっさんを縛る。



おっさんはじっちゃんに任すとして……。



未だにうるさいに近付き、ヒョイッと抱き上げる。



「うわっ!」



……色気ねー叫び方。



「……はーい、帰るぞ」

「これは女の子が一度は夢見るお……」

? それ以上言ったら落とす」

「…………」



言わせてくれたって良いじゃん。お姫様抱っことか女子の夢じゃん……とブツブツ言っていたが、聞こえないふり。



……恥ずかしいんだよ!!



* * *



「……なぁ、なんで誘拐されたんだ?」



里に向かっている最中、オレはずっと気になっていたことを聞いてみた。



「あー昼寝してたら拉致られた」

「はい?」

「だからー昼寝してたんだって。気付いたらあそこで、なんか痛いなぁってお腹見たら血で真っ赤でさ」



びっくりしたよとケラケラ笑う



「…………」

「あれ? ナルト?」

「……もういい……」



……なんなんだろ、コイツ。……つーか起きろよ……。 なんか頭痛くなってきた……。



の話しを聞かなきゃ良かったと思いながら、溜息を吐く。



「……ねぇ……」

「あ?」

「中々、助けに来てくれなかったのはなんで?」

「…………」

「ねぇ?」

「…………」

「ナルトー?」

「……どんまい」



オレにはそれしか言えない。



「どんまいってなに!?」

「詳しいことを聞きたいなら、じっちゃんに聞け」

「じーちゃんに?」

「ああ」



なんで? と呟いていたが、オレに聞いても無駄だと思いが黙る。



「……ねぇ、ナルト」

「なんだよ?」

「助けてに来てくれたのが、ナルトで良かった。……ありがとね?」

「……どういたしまして?」

「……なんか眠くなってきた。ちょっと寝るね……」

「おい」



スースーと寝息を立てる



「寝るの早いな、おい」



ふと、の顔を見ると、目の下に隈が出来ていた。



「……あっ……」



……寝るのがなによりも好きな奴なのに……。



フッと笑みが零れる。



「……まっ、ゆっくり寝てろ」



* * *



「……まっ待て! 話せば分かる!!」

「分かるか!! 何度も助けて。……まで書いたのに気付かないって何!?」

「…………」



……まぁ仕方ねーよな。じっちゃんが悪い。



あれから病院に運ばれたは以外と傷が深く、全治3週間で入院中。

おっさんは警察行き。

じっちゃんは……現在壁に追い詰められている。

助けを求めたメモを気付かなかったというのが、にバレた。……ってかオレがバラした。



、落ち着け? 傷口開くぞ」

「ナルト、うるさい!!」

、すまん!! わしが悪かった!!」

「謝って済んだら警察いらねーんだよ!!」



元気だなー。もう退院してもいいんじゃね?



騒がしい二人を見ながら、オレは普段の日常だなぁとしみじみと思っていた。



* * *



今回はナルト視点のお話。

数年ぶりに夢を書いてみました。

甘さを求めて、よく分からないモノが出来ました。

なんだろ、うん…。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!!

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