とろけるチョコを君にあげる
とろけるチョコを君にあげる
「ねぇー」
「ん?」
「チョコちょーだい?」
「…………」
もうそんな時期かと、しみじみと思いながらも逃避するオレ。
と知り合ってから、毎年、バレンタインとホワイトデーになると騒ぎ出す。……この時期っていうか年中うるさいけどな。
まぁいいか。オレからに言うことは一つ。
「あーあー聞こえない」
「チョコ―!! 甘くてとろけるチョコー!!」
「ガキ」
「ガキだもん!」
「うるさい。喋んな。寝ろ」
「ひどっ! この時期はチョコが大量に貰える素敵な日なんだよ!?」
ホワイトデーは、まだ分かる。
バレタインも最近は友チョコってあるしな。……けど、基本的には逆じゃねーの?
「それなのにくれないとか、お前何様のつもりだ!?」
お前が何様だ。
言ったとこで、【様】って言うんだろうけどな。
……はぁ。
「……そんなに言うんなら」
「くれるの!?」
途端、目を輝かせる。
「オレにもチョコくれ」
「は?」
「だからチョコ」
「なんで?」
……なんでって……。
「素敵な日なんだろ? 何? バレタインはお前だけの日なのか?」
「うん」
「ちげーよ」
間髪入れずにツッコむ。
……オレ、の将来が心配になってきた。
「えー」
「平等」
その言葉に少し考え込む。
「……んーじゃぁ一つ条件」
「なんだ?」
「ナルトの手作りが食べたい」
「は?」
「手作り食べたことないなぁと思って」
「…………」
オレ料理出来ねーよ? なのに菓子作り? なんつー無茶振りを……素直にチョコ渡せば良かった……。
「ナルト?」
「…………わかった」
「やったー!!」
「…………」
単純な奴。……けど、すごい喜んでるな。
こんなことで喜んでくれるなら、少しは頑張ってみるか。
* * *
「…………意味分かんねー」
あれから一週間。オレは暇さえあればチョコ作りに向かっていた。
ただ溶かして固めれば良いんだろう? と思っていたが、今はそんなこと考えていた自分を本気で殴りたい。
「……はぁ」
溜息しか出ない。
……チョコごめんな?
チョコだった物に謝る。
オレは壊滅的に菓子作りに向いていないことが分かった。
「って凄かったんだな……」
ふと、去年、が作っていた巨大なチョコレートケーキを思い出す。
あのときはアホじゃねーの? と思ったが、今は違う。フツーに尊敬するわ。
「……もう、チョコ買ってきて作ったことにしようか……」
は楽しみにしてるから! と当日までじっちゃんの隣の部屋に行ったし。
包装だけ変えればバレないんじゃね? ……バレたら……うん、考えるのは止めよう。
「よし! 買いに行くか」
上着を羽織っていると、ガチャっというドアが開く音がした。
「ナルト!」
えっなんでの声が!?
「ナルト居ないのー?」
「……よ、よう。どうした?」
「あっナルト! ちょっと心配になって戻ってきたの」
にこにこしながらオレを見るに何故か胸が痛い。
「……あれ? 出掛けるの?」
「あ、ああ、材料買いに……」
そんなことを考えてたら、自然とその言葉が出ていた。
「そうなんだ! じゃあ、私帰るね。頑張って!」
それだけ言うと、は帰って行った。
「…………」
帰ったばかりの、の笑顔を思い出す。
「……もう少しやってみるか」
* * *
「……よし、諦めよう」
バレンタイン当日。
進歩のないオレの技術は、当日になったとこで上がらなかった。
完成はしなかったが、妙な達成感があった。
市販のチョコも買ってきたし、には謝ればいいかと思っていた
オレがそんなことを考えていると、ガチャという玄関が開く音がする。
「ただいま♪」
「おかえり」
「チョコはー?」
「あっ……そのことなんだけどな……」
「うん?」
「オレが作ったのは失敗してないんだ」
「は!?」
「市販の買ってきたから」
オレはそう言うと、ポケットからチョコを取り出しに手渡す。
「…………」
「、ごめんな?」
下を向いていたが顔を上げる。すると、オレの顔を凝視してきた。
……そして、ニヤッと楽しそうに笑う。それを見た瞬間、何故かゾクッと悪寒が走る。
グイッ
「うわっ!」
服を引っ張られバランスを崩す、それと同時にに頬を舐められた。
「!?」
「……あまっ」
そう呟くと、パッと服を放された。
「…………」
「ご馳走さま♪」
「…………」
オレは手を頬に当て、呆然と立ち尽くしていた。
そんなオレに気付いているのか、いないのか。は鼻歌を歌いながキッチン向かった。
……いや、あれは気付いてんな……。
「…………やられた…………」
……まさか、チョコが付いてたとは……。
……が帰って来る前に、鏡で顔を確認すれば良かった。
「ナルトー、ケーキ食べよー?」
「……ああ」
……さて、甘くてとろけるチョコレートを君と食べようか。
* * *
バレンタイン短編です。
頬ペロの為だけに頑張った←
ここまで、読んで頂き、ありがとうございました!
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