静かな日もありますよ






突然……そう本当に突然。



「リドルって薔薇似合いそうだよねー」



教師に頼まれた手伝いの帰り、たまたま通り掛かった人気のない場所に普段、無駄に煩いが座り込んで静かに空を眺めていて、そんな彼女が珍しくて、いつものお返しに少し驚かしてやろうと声を掛けただけなのだ。



「あげる?」

「要らないから」

「我が儘は良くないよ?」



は僕の言葉を無視してローブの内側から赤い薔薇を取り出すと僕に向かって投げてきた。



「だから投げるなって。……はぁ、なんで花なんか持ち歩いてるわけ?」



僕の不満や疑問をシラーッと無視して、また空を眺め始めたを少し不思議に思ったが、それ以上に声を掛けたことを後悔した。
もう放置して寮に帰ろうかとも考えたのだが、多分今ならも解放してくれるような気がするしね。
だけど、普段は憎たらしいくらいよく笑う彼女が、今はボーッとしていてあまり表情が変わらないから余計……。



「……なんで薔薇?」

「似合わなそうだけど似合いそうで似合いそうだけど似合わなそうってら辺が?
リドル的にはどっちが良いのかねー」



そう薄く笑う彼女に見馴れていないからか違和感を覚え、訝しげに見つめるとポケーッとした様子で見つめ返された。



「?」

「キミ酔ってるの?」

「まさか。充電中ー」

「へぇ。……薔薇か……似合わなくて良いんだよ」



花言葉は確か……愛情だっけ?
ハッ最高に悪意の籠った嫌がらせだよね。
グシャっと持っていた薔薇を握り潰すと、の表情がほんの少しだけ楽しそうなモノに変化した。



「……さ」

「ん?」

「機嫌悪いだろ」



すると隣でふ、と笑う彼女に先程のボーッとしてたときの雰囲気は消えていて機嫌が少し直ったみたいだ。
僕は小さくため息をついた。
どうやら自分は体よく八つ当たりされたらしい。



「……普段より面倒なんだけど」


と、呟くとケラケラ笑う声が下から聞こえてきた。
大人しいときの方性質が悪いって、意味が解らないから。





*


2014.03.16