ないしょ
ないしょ
「トム君だわ!」
急に上げた友達の奇……大きな声。ポケーッとしてた私は少しだけビクついた。
「ふぇっ? 誰それ?」
「トム・リドルよ! 顔良し、頭良しのスリザリンの有名人!!」
「へぇ」
「、まさか……」
私のシラーッとした態度で本当に知らないと気付いたらしい彼女が手を額に当てた。知らないもんは知らないし。
「申告済み。人の名前と顔を覚えるのが苦手」
「だからって限度が……ああ、もう、いいわ! あれがトム君よっ!!」
ぐいっと首を固定され無理やり見せられた先には女子に囲まれた黒髪の少年がいた。
肌が透き通ってそうなほど白い。
顔は長めの前髪に隠れて見えないけど多分美人さんな気がする。
……ってか女の子みたい。
表情見えないからなんともいえないけど。
少し変態の気持ちが解りながら観察してると、トム・リドルがほんの一瞬、此方を向き微笑みを浮かべた。
「あ」
……ああ、うん。
下を向きフッと笑うと、私の首を押さえ付けてる友達の手を退かした。
「ねぇ、次の授業遅れちゃうから行こ〜」
「あっ待ってよ!」
後ろから友達の「トムくん、格好良かったでしょ?」という声に「そうだねー」と適当に答えといた。
確かに格好良いと思う。
けど、あれはダメ。
*
夜。友達がシャワーを浴びに行っている間、私は一人ベッドで唸っていた。
「赤? 違う。赤黒い? ちょっと違うような……んー……深紅?」
クスクス、笑い声が自室に響く。瞳の色が宝石みたいに綺麗で、つい考え込んじゃった。
「笑うの上手いなぁ」
薄ら寒い。
私、そういうの見付けるの得意っていうかクセなんだけど、嫌なら笑わなきゃ良いのにね?
「……ま、優等生って苦手だし、遭遇しそうになったら全力で逃げようかな?」
そう呟いてニヤリと笑った。
*
知り合う前のお話。
2014.01.24