彼女の気まぐれ



クリスマスなんて嫌いだ。



今年のクリスマスは上手く女子達から逃げ切れて自分的に珍しく少し嬉しい気分になれたのに、一瞬にして最悪に変わった。

まさか一番会ってはいけない奴に捕まるなんて。





彼女の気まぐれ





「リドル、リドル!」

「……げっ」



自分でも表情が歪むのが分かった。に会うとか最悪。



「ふふ、わざわざ捜した甲斐があったよ」



にやにやと意地悪く笑う。それはそれは嬉しそうに。

ああ、もうホント最悪だ。



「……どういたしまして」



精一杯の皮肉を込めて言ったがには通じない。

はぁ、と溜息を吐いてから用件を聞いてさっさとこの場を立ち去ることにシフトチェンジしよう。



「……で、なに?」

「お菓子ちょうだい?」

「は?」



訝しげに彼女を見ると、そのままの意味だけど?とは言った。理解は出来たが意味が分からない。



「……いや、持ってないし」

「だよね、残念」



全然残念そうに見えないのは、きっとけらけら笑っているからだろうな。



「まぁいいや。これあげる!」



そう言って僕に渡してきた小さな箱。



「なにこれ?」

「ケーキ! 作りすぎたからあげる」



……要らないよ……ってか。



「……毒入ってないよね?」

「リドル入れて欲しかったの? 言ってくれたら入れたのに……あ、今からでも垂らす?」



どれにしよっかな〜と、言いながら は謎の小瓶をポケットから取り出してきたが……なにが入ってるのかは聞かないと心に決めた。



「……いいよ、入れないで」

「そう? んじゃ用はすんだからまたね〜」



それだけ言うと珍しく大人しく去っていた。

そんながなんだか不気味で、渡された箱が少し怖くなり、その場で中を見てみることにした。



「!」



正直驚いた。

ホントにそこにただのケーキがあるとは思わなかったし、それに作り過ぎたと言うわりに……。



試しに生クリームを舐めてみると、上品な甘さで普通に美味しい。



「……へぇ」



箱の中には小さなメモがあることに気付き、読んでみると思わずフッと笑みが溢れる。



゙プレゼントはお菓子希望゙



ただそれだけ。

それがなんだかとてもらしくてクスクスと笑ってしまった。

どうやら初めから僕が持ってないのを分かってたみたいだ。



「……さて仕方ないから僕も用意するか」



……癪だけど、ほんの少しだけクリスマスが好きになりそうだ。





* 2013.12.24