こんなんでも仲良し…?


暇で暇で暇すぎて、そういうときからかう相手が一人は必要だ。
そして目の前に絶好の獲物がいた。
みっけ、人知れずポツリと呟くと私はその獲物に声をかけた。





こんなんでも仲良し…?





「そんな本ばっか読んでると目が悪くなりますよーっと!」
煩い」
「ひどいなぁ」





獲物改めトム・リドルは真面目で本ばっか読んでいる。
そして私を見る度に「また出た」と言う風に顔をしかめる。他の人には親切なクセに、この差はいったいなんだろう?……まぁ知ってるけど。





「ねぇねぇ、リドル。ひまなの。ちゅうしよ、ちゅう」
「はぁ?」





……うん。ごめん、ミスった。今のは私が悪かったと思う。ちょーっと、いや、かなり暇すぎて頭回らなかった。
だから呆れた感じで見ないで、ホント。素直にそう言おうとしたらリドルの奴。





「頭大丈夫?」
「…………」





カーンってゴングが鳴った音が聞こえた。
……うん、その喧嘩買おうか。





「リドル性格歪んでるけど、顔だけは良いからさ。ファーストキスの相手にぴったり?」
「はっ、絶対嫌だ」
「…………」





別に本気でしたい訳じゃないけれど、こう全力で拒否されるとさ、余計ね。





「……リドル真面目っ子だから出来ないもんね〜知ってる」





べぇっと舌を出し小馬鹿にしたようにケラケラ笑うと、リドルがムッとしているのが分かった。
分かりやすいな少年。と思いながら無視して笑っていると、グイッと腕を引っ張られた。





「うわっ?!」





不意打ちに過ぎて抵抗もなにもなく、引力の法則?そんな感じに逆らえず
それにともない当たったテーブルの角が地味に痛くてリドルに文句を言おうと顔を上げると私の唇に柔らかな感触が擦った。





「っ!?」
「ほら、これで満足かい?」





リドルに言われて気付いた。一瞬過ぎてそれをキスといって良いのか悩むけど。





「……ははっ……」





満足じゃねーよ。





人間驚き過ぎると笑いが出るらしい。





まさかの仕返し。





不覚にも動揺。





そんな私の様子にフッと鼻で笑ってからリドルはまた何事もなかったかのように、本を読み始めた。





そんなリドルを見て私は、私は――……。





イラッとした。





ので。





リドルが読んでいた本をぶん投げた。





「ちょっ、なにしてるの!?」
「つい?」
「…………馬鹿じゃないの?」





甘い雰囲気になるには程遠い。





*



2013.12.22