三年生
逃げて走っていた先輩。
廊下を同寮の友人と話していた僕は内心溜め息を吐いた。
あの人も懲りないな、と眺めていたら目が合った。
一瞬驚いたように目が大きくなった先輩に珍しいって思ったが、次の瞬間にはニヤッと笑っていた。
凄く嫌な予感がした。
それにともない自分に向けて走ってくる先輩。
気付いたときには腕を掴まれ引きづられていた。
遠くで友人達が驚いたように自分を呼ぶ声が聞こえたが、僕は諦めた。
「……今回は?」
「レ、レギュラス君、怒んないで?」
「別に怒ってません。呆れてるだけです。こうも毎回人を見掛ける度に引きずり回すなんて、才能あるんじゃないですか?」
「褒めないでよ」
キャッと照れる先輩に頭が痛い。
「頭大丈夫ですか?」
「……レギュラス、辛辣になったね」
「先輩のおかげですね」
薄く笑えば、頬を引きつらせブツブツ鬱陶しいことを呟く先輩。
「で?」
「大したことしてないよ? 昼寝してたら授業始まってたらしくて、それがフィルチに見付かった?」
疑問系?
不可抗力だから、と先輩は顔を隠して泣き始めたけど僕には関係ないですし。
巻き込まれる方としてはしては堪ったもんじゃないですよ。……でも、まぁ。
「ほら、先輩。いつものことでしょう? 一々、泣かないで下さい」
先輩の頭を撫でながら、慰めてる僕がいるから慣れとは恐ろしいモノだ。
*
私の頭を撫でているレギュラスに、小さく舌を出して笑った。
……実は毎回、逃げてるって訳じゃないんだけどね?
レギュラス見付けると、ついね。
気付いてないから敢えて言わないけど。
それに勘違いしてるみたいだけど、悪戯仕掛人のメンバーじゃなかったり?
気付いたら怒りそうだ、と肩を揺らして笑っていたら。
*
「……先輩。
まさかと思いますが嘘泣きなんて言いませんよね?」
先程からやけに静かだと思ったら、肩を小さく揺らし始めた先輩に疑惑の目を向けて呟くと。
「さてね?」
けろりと顔を上げて笑っている先輩にやっぱり嘘泣きだったか。
「レギュラスは可愛いね!」
全く嬉しくないことを言われ、頭を撫で回され一つしか違わないのに子供扱いをされる、今日何度目か分からない溜息を吐いた。
「……全く」
グリドールだというのに、僕に構う可笑しな先輩。
この人の側にいるとなんだか調子が狂う。
*
2014.02.24