一年生
(問)先輩の第一印象?
(答)騒がしい人。
決まってるじゃないですか。
すごい嬉しそうに兄さん達と悪戯してたし。
僕に全てを押し付けて自由を手にした兄さん。
そんな兄さんと仲良くしてるのはどんな人達だろう、とスリザリンの席からグリドールの席を眺めていたら必然的に先輩を見る機会が多くなった。
いつも楽しそうに笑ってる人。
そんな先輩と初めて話したのはーー……。
「あー」
「?」
「ドッペルゲンガー」
「…………」
なわけない。
先輩との初めての対面は教師に会ったら、まず罰則は免れないだろうという時間帯。
僕としては早く寮に帰りたかったが、先輩はそれ以降口を開かなかった。
どうしたもんかと困っていると、ピクリ、と何かに気付いたように僕の腕を掴んで走り出した。
「ちょ」
遠くでフィルチの怒鳴り声が聞こえた気がしたが、先輩のせいではないと思いたい。
ある程度走り足が痛くなり始めた頃に知らない部屋に引きずり込まれると、やっと掴んでいた腕を解放してもらえた。
「ハァー……疲れた。大丈夫? シリウスのドッペルゲンガー」
「それ本気で言ってるんですか?」
少しムッとした。
僕は兄さんじゃないのに。
「何なんですか? 人を指差して黙り込んだら、次は走りだして」
「じゃあ、そっくりさん?」
人の話を聞け。
「レギュラスです」
放っておいたらいつまで言われそうな気がして、早々に名前を告げた。
「弟? ……ああ、あの」
一瞬、苦笑の中に苦虫を噛んだような表情をした先輩。
僕のこと知ってたんだ。まぁ周りに情報源は色々あるか。
だけど、その表情は……?
「グリドールに入ってから口を聞いてくれないって、シリウスがウザいくらい泣き始める、あのレギュラス君」
「…………」
アンタ何してんだよ。
たかが弟が口聞かないくらいで。その場に居ない兄に向けて舌打ちしたくなった。
その胸中を察したのか、なんだか知らないが先輩も先輩で肩をポンポン叩かないで下さい。
情けなくなります。
「そうそう。私は・ね。よろしく、レギュラス君」
「……あ……」
なんとなく目に入っていた知らない人が色付いた気がした。
差し出された手。
ニィッと悪戯っ子のような笑顔を浮かべているのを見て、少しだけ躊躇したけど、その手を掴んだ。
「よろしく……お願いします」
先輩との出会いの話。
……それから会う度に腕を掴まれ強制逃走劇に付き合わされるって解っていたら絶対に掴まなかった。
*
えへ、書いちゃった。
2014.02.24