昔は可愛かったのに……。
昔は可愛かったのに……。
「ただいまー……あれ?」
私が任務から帰ってくると珍しいことに、じーちゃんが寝ていた。
疲れてるのかなと思い、起こさずにそのまましておく。
「……あっ」
* * *
「じーちゃ、じーちゃ!」
「あそびにきたの! あそんで! あそんで!」
「じーちゃ、にんじゃのしゅぎょうしてみたい! ちゃん、さとの人たちを守れるようになりたいの!!」
昔、昔の記憶。可愛かった頃のキミ。
今は――……うん。これは夢かのう。
「ねーむーいー」
「じーちゃーん。 里の平穏より、私の安眠の方が大事だからね?」
「つーか、あの人達に守る程の価値ってある?」
…………あの頃のキミは今、何処へ?
* * *
じーちゃんも寝ているままで、することもなくなったので、仕方なく報告書を作成することにした。
「……ぅ……ん……」
報告書の作成が終わりボーッとしていると、じーちゃんの声が聞こえてきた。
「はよー?」
「……?」
「うん?」
「……昔は可愛かったのに……」
「は?」
「……はぁ」
「はぁ!?」
溜息って何!? ってかいきなり何!?
「うるさい。外まで聞こえたぞ」
「うっせーなー。なに騒いでんだよ?」
「ごめん……って私は悪くない!! じーちゃんが訳分かんないこと言うからだ!!」
ナルトとシカマルが帰って来たと思ったら、この発言。反射的に謝ってしまったが私は悪くない!!
『はぁ?』
「じっちゃんのせいにすんな」
「お前がなんかしたんだろ」
「はぁ!?」
二人は全く信じていないが。
えー? 私何かした? ねぇ?
「じーちゃんに聞いてみなよ!」
「はいはい」
「じっちゃん!」
「ん? あーご苦労じゃったのう」
今まで昔を懐かしむように遠い目をしながら、ボーっとしていたじーちゃんだったが、
声を掛けられ、居たのかという風に二人を見ている。
「なんで、そんな暗いんだ?」
「……ああ。の夢を見たんじゃ」
『うん?』
「今のじゃなくて、小さい頃のなんじゃ。あんなに可愛かったのに……今は――……」
そう言ってを見ると、はぁと溜息を吐いた。
『…………』
今は見る影も無しじゃ……と、言われてる気がした。いや、目が語ってた!
「そんな可愛かったのか?」
ナルトがポツリと呟く。
「じーちゃ、遊んでって! 今みたいに黒くない笑顔でわしの側に近寄ってきてのう。
里の者達を守れるようになりたいから修行したいって。昔は向上心がある良い子じゃった。……あの頃は良かったのう」
「…………」
えっ? えっ? 私そんなこと言った?
えー? 過去の私、余計なことを言いやがって! うーわー、なんか変な汗出てきた!!
ダラダラと汗が背中を流れ、口が引きつるのが自分で分かる。
「ああ」
「うん」
『そりゃ可愛いわ』
「……えーと、なにからツッコめば? とりあえずハモんな?
それに、私は今も可愛いままだからね? あの頃と、か、変わってないからね??」
あっ噛んだ……動揺しすぎだ、私。
『どこが?』
「……はぁ」
間髪入れずに言われた挙句、この溜息。
い、いじめか? いじめなのか!?
ってか私が悪いのか!?
「…………」
「お前のどこに可愛さが残ってんだよ?」
「ないない。僅かにも残ってないから」
『あー見てみたかった』
「……はぁ」
「…………ねぇ。言いたいことはそれだけ?」
ったく、好き放題言いやがって。
* * *
「帰る」
はそう言うと、部屋から出ていった。
「……久しぶりにの蹴り喰らったわ」
「……ってぇ……じっちゃん、大丈夫か?」
「……老体にはちと、キツイわい。さて、仕事の続きをやろうかのう」
「オレ達も報告書を書くか」
「だなぁ」
「ん?」
「なに? じっちゃん」
「どうした?」
ナルトとシカマルは報告書から目を離さずに火影に声を掛ける。
「おぬし達がやってくれたのか?」
『なにが?』
「仕事がほとんど終わっているんじゃ」
「じっちゃんがやったんじゃねーの?」
「わしじゃない」
「俺達でもねーよ?」
目の前に残っている書類は、自分が絶対にやらないといけない数枚の書類だけ。
「……まさか」
「もしかして」
「……多分、そのまさかじゃ」
少し前に自分達が散々な言い様をした少女のことを思い出す。
「おぬし達、急いでの後を追ってくれ!!」
「おう!」
「了解!」
そう言うと二人が外へ飛び出して行くのを見届けると、
ふと、夢の続きを思い出す。
「じーちゃ、にんじゃのしゅぎょうしてみたい! ちゃん、さとの人たちを守れるようになりたいの!!
……でもね、じーちゃ。 ちゃんは、じーちゃを1ばんに守るよ!」
「うん? 何故じゃ? には、わしよりも里の者達を一番に守ってくれる忍者になって欲しいんじゃが……」
「う? じーちゃがだいすきだから!! さとの人たちよりじーちゃをたすけたいのー」
「そうか、そうか。ありがとな」
「えへへ♪ んとね、2ばんは、かかしなのー」
* * *
「……なに?」
数十分後、じーちゃんの部屋に連れ戻された私は不機嫌だった。
「すまん!」
「わりぃ!」
「すまねぇ」
「は?」
「これ……おぬしがやってくれたのじゃろう?」
そう言って見覚えのある書類を私に見せてくる、じーちゃん。
私が下を向くと……。
「すまん、。ありがとな」
謝罪と感謝。……恥ずかしいんだけど。
顔を上げると、にっこりと微笑んでいるじーちゃん。
……だーかーらー、恥ずかしいから!!
「…………さぁ? なんのこと?」
そう言って、私も笑った。
「……照れてんな」
「……ああ」
「黙れ。ナルト、シカマル」
今まで黙っていた二人が余計な口を開く。
『、可愛いー♪』
ニヤニヤと意地悪く笑う二人に本気でイラッとした。
「……じーちゃ、おねがーい」
「なんじゃ?」
「ちゃん、明日の任務を全部休みたいなー? 代わりにね、二人が馬車馬の如く働いてくれるって♪」
「なっ!?」
「おい!!」
「うむ。は明日、休んでよいぞ」
『ちょっ!?』
「やた♪ んじゃ、おやすみー」
「気を付けて帰るんじゃぞ」
「!!」
「待てよ!」
『悪かったって!!』
昔々の呼び方で、お望み通りの願いごと。
えっ黒くないのが良いって? あーあー聞こえなーい。
* * *
「つーか、あの人達に守る程の価値ってある?」
「! なんてことを言うんじゃ!!」
「事実じゃん?」
「なら、おぬしは何を守っているんじゃ?」
「はぁ?」
なに今更なこと言ってんの? という風にわしを見る。
「じーちゃん」
それだけ言うと、さっさと隣の部屋に帰って行く。
里の人達を守るとかよく分からなくなったが、
身近な人達は大切だから。私が守るよ? その人達の平穏はね――…?
* * *
……なんだこれ。夢か?夢なのか?
じーちゃん夢?
小っちゃい頃のヒロインを書いてみたかったんだけど、
なんか違うよ?書きたかったものとなにか違うよ?
難しいね……まぁ、ほのぼの夢ってことで……うん。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!!
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