彼女との出会い *彼女との出会い*



幼い頃。
天気は悪い。ただそれだけで僕は苛々していて城を抜け出したんだ。
そうしたらさ?
城の近くで泣き声が聞こえてきて、普段なら絶対に行かないけど、そのときは気になって行ってみたんだ。
そうしたら座り込んで泣いている僕と同じくらいか、少し年下の女の子がいたんだ。



*



「……ぅぅ……ひくっ……」

「なに、泣いてるのぉ?」

「……ひっく。
ママ、いっちゃった……」


行っちゃったって何?
少しフシギに思ったけど、気にしないでぼくは続けた。


「ふーん? お前、名前はぁ?」

「……


もう泣いてはいないけど、今度は少しケイカイしながら名前を言う


「……おしろには"こうはさま"ってこわい人がいて、見つかると食べちゃうって言うし……どうしよう……」

「……へぇ」


ぼく……だよね? 食べないし。だ〜れ? 変なうわさを流した奴ぅ。


「お兄ちゃん……は?」


そんなうわさがあったら、名乗れないってか、名乗りづらいんだけど……。だから、つい。


「ないしょっ♪」

「えぇ!?」


目を真ん丸にしておどろく
……あっ、反応可愛いかもぉ?


〜。
親が来るまで家に来なよ〜?」

「いいの?」

「いいの、いいの。おいで♪」


*


あれから十年近く経ったけど。
の親は結局来なくて、今もはこの城にいる。


「紅覇様?」

「ん?」

「どうしたんですか?」

と初めて会った時のことを思い出してたのぉ」

「なんてモノを思い出してるんですか!?」


あっ、焦ってるぅ。
珍しいモノを見たなぁ。


「あの時は可愛かったよねぇ? 僕に食べられるって!
別に食べないしぃ」

「は、恥ずかしい! 恥です、汚点です!!」

「そこまで言う〜?」

「言いますよ!!」


顔を真っ赤にして叫ぶ
僕はケラケラと笑った。


……まさか、あの泣いていた少女が今では僕の側近をしてるなんてね〜?
人生何があるか分からないよねぇ、ホント。


「紅覇様!?」

「はいはい、なぁに?」


*

結構、楽しんで書けました。

2012.11.14