魅惑の毒林檎 *魅惑の毒林檎*



甘い甘い林檎。
一度食べたら抜け出せない魅惑の林檎。
どうか、どうかお気を付けて。



*



「アリババ様、お一つ如何?」



そう言いが林檎を差し出してきた。



「……様ってなんだよ。
気持ち悪い……まぁ貰うけど」



差し出してきた林檎を貰い、一口かじった。



「あまっ! 美味いな、これ!」



それはすごく甘かった。
しかしは不満そうな表情だった。



「ノリ悪ーい」

「ノリってなんだよ?」

「ノリはノリ!」

「……お前、今度は何を見たの?」


何かに嵌まると、それに影響される。今回は何を見たのか。



「異国の童話!
ねぇ!
様って言ってみたくない?」

「いや、別に?」

「女子なら一度は憧れる王子様!アリババ黙ってれば格好良いし。なってよ、王子様に!」



聞けよ、人の話!



「……はお姫様になりたいのか?」



普通、それセットだし?



「いや? 私は魔女かな」

「こわっ!」 



……つーか、
王子でも姫でも魔女でもなんでもいいけど。



「俺、一応王子なんだけど?」

「……え」

「え?」

「こんなのが?」

「謝れ、俺に!」

「ごめん、ごめん!」



つい、本音が……とか言ってるけど、それ隠せてねーぞ。



「えへへ、じゃあさ……、
魔女を助ける王子様になって下さいよ」

「なんでだよ?」

「たまには
魔女が救われる話が見たいから」

「? 変な奴」



俺を無視し、は続けた。



「それに、こんな王子でもアリババ様とのハッピーエンドを望んでる魔女もいるからね?」


私とか? と、恥ずかしそうに聞こえないくらい小声で言う



「……はぃ!?」



の不意打ちに俺は顔が熱くなるのを感じた。
多分、林檎みたいに赤くなってんだろーな、って。



*



甘い甘い魅惑の毒林檎。
嵌まると抜け出せない恋の味。
貴女もお一つどうですか?



*
格好良いアリババくんが書きたい
今日この頃。

2012.11.11