ここ数ヶ月、私達はずっと任務任務任務任務任務……。
休み無しでひたすら任務だった。


*一ヶ月遅れのバレンタイン*



「ふぅ、やっと終わった……」



私はやっとの思いで任務を終わらせ、ベットの上に倒れ込んだ。



「やっと寝れる〜!!」



私にとって約3日振りの睡眠だった。……いやなる筈だった。
アイツに邪魔されるまでは。



カッ! コンコンッ!!
突然、窓から聞こえてきた騒音。


「……うっせぇな……」



眠いのを一端、我慢して窓を見ると、そこには普段、自分を呼びにくる鳶ではなく違う鳶がいた。



「ねぇ、ねぇ任務だよ! 早くここ開けて! これを受け取ってよ!!」



……は? 鳶が喋った。えっ? 口寄せ鳶?



私は窓を開けないで、その鳶を眺めていた。すると今まで、まぁ可愛かった鳶が……。



「グズグズしねーで、さっさと開けろよ! バカ女!!」



ピクッ。



「…………」



私は無言で台所まで行き包丁を持ってくると、今まで閉めていた窓を開けた。
そしてその瞬間、私に暴言を吐いた鳶を捕まえた。



「何すんだ!? 放しやがれ!!」


当然騒ぐ鳶。



「……ぇ……」
「はあ!?」



鳶は何を言っているのか分からず聞き返す。



「全く煩い鳶だね〜」



満面の笑みを浮かべ鳶に言った。


「ンだとテメェー! ぶっ殺すぞ、バカ女!!」



この一言での顔から笑顔が消える。



「ふーん。……おい鳥。
今度、生意気な口聞いてみ?
その羽毟ってお前の体串刺してやるからな」



包丁を突き付けて言った。



「ヒッ」



すると散々生意気な口を聞いてた鳶の顔は真っ青になって静かになった。



「す、すみませんでした!! これに任務の書類です! それでは失礼します!!」



鳶は用件だけ言うと、すぐに飛び去って行った。



「……たくっ」



少し眠気が覚めたので、鳶が置いていった任務の内容を見ることに。



「…………」



それ見た瞬間、私は先程の包丁を持ってじーちゃんの所に向かった。



【とにかくすぐに来い 火影】



*



じーちゃんの屋敷の前に着くと、そこには江狐と蒼鹿もいた。
どうやら二人も同じ様なことを考えてるらしい。

類は友を呼ぶ。
頭の片隅にそんな言葉が出て来た。

私達はいつも通り窓から部屋に入る。そして、入った瞬間。



『ジ〜ジ〜イ〜!! ……テメェ、あんま調子乗るんじゃねーぞ!?』

「私、3日寝てねーんだよ!! 寝ようとしたらあのふざけた鳶に起こされて、それで任務だぁ?
ふざけんじゃねー!!」

「おい、ジジイ!
こっちだってそこまで体力続かねーんだよ!!
次から次へと任務突っ込んでんじゃねーよ!!」

「ジジイ、てめぇ!!
なんでオレらばっかこんな任務が続くんだよ!! 有り得ねーだろーが!! 他の奴らはどうなってんだよ!?」



そして一呼吸置いてから同時に言った。



『これ以上、この生活続けさせんならこの里ぶっ壊す!!』

「!?」

「作るのは大変でも壊すのは簡単だからね〜」

「だよなぁ。みんなの信頼も消えるだろうな」

「オレ、前々から壊してみたかったんだ」

「あー、それわかる」

「誰だって1度は考えたことあると思うぜ?」

「まぁ、やってもオレらには関係なくね?」

「だよね」

『……里の奴らから見たらただの下忍だし?』

「!!」



火影は焦った。この3人ならそれだけの力をホントに持っているからだ。



「ま、待て! 話せばわかる!!」

『わかんねーよ!!』

「落ち着けって! とりあえず話を聞け」

『…………』



私達は渋々話を聞くことにした



「これが終われば、とりあえずSSSランクの任務が一段落する。
お主らの任務を全て休みにする。だから、もう少し頑張ってくれ」
「休みってどれくらい?」

「二週間は絶対に約束しよう!
もっと欲しいなら言ってくれ!!」

「一ヶ月」



江狐が間髪入れずに言った。



「あっいいね、それ!」

「のんびり出来るしな」



私と蒼鹿も江狐の意見に賛成した。



「そ、それは……」



じーちゃんはこの先を言えなかった。
いや、江狐が言わせなかった。



「はぁ?
オレら、それ以上に働いたぜ?
それで一ヶ月の休みが多いってのはおかしんじゃねーの?」



いいぞ、江狐! もっと言え!



「……そうしたら任務がのう」

「暗部なら他にもいるじゃん」

「レベルが合わない気が……」

「は? なに言ってんの?
前は私ら程ではなかったけど、今ほど低くなかったよ」

「それにこの頃、怠け過ぎなんだよ。ちょうど良い機会なんじゃねぇ?」

「これで死んだら、自分らの弱さのせい」

「そうそう」

「わ、わかった! 任務が終わったら、お主らに休みを一ヶ月やろう!!」



じーちゃんは苦笑しながら休みを許可した。



「やった♪ んで、じーちゃん任務は?」



さっきまで機嫌の悪かったに久しぶりに笑みが零れた。



は、これから一ヶ月ある国に潜入してきてくれ」

「…………」



の顔から、一瞬にして笑顔が消えた。



『(それはイジメだろ!?)』



私はさっき鳶に向けた包丁を取り出し、じーちゃんに突き付けた。


『(包丁!?)』

「死ね。いや殺す。
どう考えても有り得ないでしょう?
貴方は私に何か恨みでもあるんですか? ……ねぇ、火影様?」

『(こわっ!!)』



三人は思った。
静かに淡々と喋るがゾッとする程恐ろしい、と。



「……なぁ、アレ止めた方がよくね?」

「……ああ、すげぇめんどくせーけど」



二人は同時に呟く。



『……はあ。ジジイ、本当にロクな事しねぇ』



一歩ずつじーちゃんに近づいていた私を江狐と蒼鹿は取り押さえた。



「ま、待て!」

「落ち着けって!」

「……なに? つーか放してよ」


私は二人を睨みつける。



「さすがに火影殺害はマズイから!」

「…………」



江狐の言葉に少しだけ冷静になった。なったが……。



「……覚えてろよ、ジジイ。
一ヶ月、絶対に寝かせてやんないから!!」



持っていた包丁を壁に突き刺して、私は部屋から出て行った。
……これから一ヶ月、火影は本当に寝かせてもらえなかったという。


*


「それじゃ気をつけてね!」
「はぁい」



この一ヶ月間、私は一般人の振りをして潜入していた。
そして今日が任務終了の日。



夜。
私はお世話になった人々の記憶から自分の存在を全て消し終わった。



「ばいばい」



そう呟き、私は国を離れた。



*



「じーちゃん、ただいま〜」
「……か。ご苦労じゃったな」



そう言ったじーちゃんの目に下には隈が出来ていた。



「……それで次のに……」

「約束通り休みだよね?」



私は笑顔で圧力を掛ける。



「……あ、ああ!! 当たり前じゃ! ゆっくり休めよ」

「うん♪」



……忘れてたな、ジジイ。



*



私は家に帰る途中に、ふと、明日がホワイトデーだと気付く。
それと同時に、先月がバレンタインだったことを思い出した。



「チョコ!!」



*



オレがソファーでまったりしているが慌ただしく帰ってきた。相変わらず煩い奴。



、お疲れさん」

「チョコ!!」

「は?」

「チョコちょーだい!」

「……」



ゴンッ!!



部屋に鈍い音が響く。
それと同時にの呻き声が。



「……っぅ〜、なにすんの……」
「あほう! 任務から帰ってきた第一声がチョコだぞ?
誰だって殴りたくなるわ!!」

「あー、確かに」

「それでチョコってなんだよ?」
「そうそう! 先月のバレンタインでチョコを貰えなかったから、今日ちょうだい!」

「……なぁ、それって普通は逆じゃねぇ?」

「気のせい」

「はぁ……後でな」

「わ〜い♪ 次はシカマルの所に行ってこよう」



それだけ言うとは、また慌ただしく出て行った。



「騒がしい奴。
……つーか、オレが貰いてーよ」


*



! ほらチョコ」

「チョコ〜♪」

「たかがチョコで、そこまで喜べるなんて幸せな奴」

「えへへ、ナルトありがとう!」
「……どういたしまして?」



ピンポーン、とチャイムの鳴る音と共に玄関の方から声が聞こえてきた。



「おーい!
オレだけど勝手に入るぞ」



数秒後、リビングのドアが開く。


「よお。シカマル」

「ハロ〜、さっき振り!」

「おう。ほらチョコ」



そう言って、シカマルは私にチョコを投げ渡した。



「わ〜い♪」

「お前もやられたんだ?」

「ああ。カカシにも要求しに行ってたぞ」

「多分、じっちゃんの所にも行ったな」

「……よくやるよ」

「だよなぁ……」

「あっ、二人とも!」



今までチョコを見ながら浮かれていた私はあることを思い出し、話していた二人に声をかけた。



「ん?」

「あ?」

「ちょっと待ってて〜」



そう言い自分の部屋に向かうと、チョコを取りに行った。
すぐに帰って来ると不思議そうにしている二人にそれを渡した。



「はい、これはナルト。こっちがシカマルね」

『?』

「一ヶ月遅れのバレンタイン♪」
『!!』

「…………」



ナルトは固まったままだった。
それを見て、私は笑いながら言った。



「ナルトへのチョコだよ」

「! ……、サンキュー」

「ありがとな」

「いえいえ」



……お返しにチョコがいっぱい貰えるなら、これくらい安いもんですよ?



*



「……はぁ。の考えてる事が手に取るように分かってちょっと複雑だよ」



この様子を見ていたカカシはそう思った。そして。



*



コンコンと窓を叩く音。
その方向を見るとカカシがいた。


「カカシ!」
「やっほー、三人とも」
「おう」
「よっ!」
「はい、



そう言い、持っていたチョコを私に手渡した。それと同時に。



「……、程々にしなよ?」



と、小さな声で囁いた。



「あはっ、バレた?」

「付き合い長いからね〜」

「……二人で何コソコソ喋ってんだよ?」

「なんでもないよ? そうそう皆でケーキ食べよ〜」



私はそう言い冷蔵庫に向かった。


*



『でかっ!!』



ケーキを見て三人が言った一言。


「やっぱり〜?」

「……これはね」

「さすがに……」

「デカ過ぎだろ!
どこで買ってきたんだし」

「私が作ったんだよ」

『はい?』



アハハ、驚いてる驚いてる♪



「アホだろ?」

「ひどっ! いーもん、ナルトにでかいの渡してやるから」

「ちょっ、まて! てめっ、それだけは止めろ!」

「いや♪」

「……あの二人ってさぁ、仲良いよね〜」

「だよなぁ」



私達のじゃれ合いを遠目で見ていたカカシとシカマルはこんなことを言っていた。
そして思う。必死なのはナルトだけだよ♪



「……ハァ。二人ともケーキ食べるんでしょ?」

「あっ! そうだった。てか、忘れてた」

「ボケが始まったんじゃねーの?」


ナルトが笑いながら言う。



「ナルトー、シバくよ?」



私はいつかの包丁を、どこかともなく取り出しナルトに突き付ける。



「落ち着け! つーか、お前まだそれ持ってたのかよ」

「まあね〜」



てか、家のだし。



*



ケーキを食べ終わると、カカシとシカマルが帰って行った。
その後、私達はリビングでまったりしていた。



「やっぱホワイトデーも良いけど、バレンタインデーだよね〜」

「そうかぁ?」

「チョコがいっぱい貰えるからね♪」

「そうか」



ナルトは苦笑していた。
……けど、ホント。
来年も楽しみにしてるからね?



また来年も♪



*

ナルト再up。

2012.11.9