*酒は飲んでも飲まれるな!*



これは1年前のクリスマスのお話……。


その時の私はまだじーちゃん家に住んでいた。
それでクリスマスなのに、任務の後、即部屋に帰るのは流石に切なくて、ナルトの家にいつものメンバーで集まっていたんだ。



*



「酒が飲みたーい!!」
『!?』



ナルトの部屋から突然の叫び声。


近くで話していたナルトとシカマルは突然の叫び声に一瞬、驚いたが、すぐにナルトが声の主に呆れた感じで聞き返した。



「……、もっかい言ってみ?」

「だーかーらー、酒が飲みたいの!」



もう一度聞いてみても答えは同じだった。



『(聞き間違いじゃなかったか……)』



二人は同時にそう思ったが、そんな二人を無視して私は話を続けた。



「クリスマスだし、シャンパンがいいな〜」

「そんな物ねぇーよ」

「つーか、その格好でクリスマスとか言うなよ」



ナルトには突っ込まれ、シカマルには呆れ気味に言われた。



……その格好? ああ! そういえば任務の後すぐ来たから血まみれだわ。



「まぁ、気にすんな? 飲も、飲も!」

「人生諦めも肝心だよなぁ……」
「……ああ」



二人は既にに何を言っても無駄だと分かっていた。



『腹を括って飲むしかない!』



*



「……で? 肝心の酒はどーすんだよ。この部屋にシャンパンなんて置いてねぇーぞ?」

「うん?
ああ、それなら大丈夫!」

『?』

「冷蔵庫の中に入れといたから」
「は!? いつ入れたんだよ!?」
「昨日かな?」

「…………」



その後、色々準備を進めていくと、シャンパン以外にも食べ物とかが大量に出てきた。



「……計画的かよ……」



これを見たナルトの頬は軽く引きつっていた。



*



「ん! 美味しい!! やっぱ任務の後は酒だよね〜」

「オヤジかよ」



ナルトがボソッと呟く。



「は?」

「ククッ」



隣からシカマルの笑い声。



「ナルトくーん。それは流石にひどくなーい?」

「どこがだよ?」

「強いて言うならぁ、乙女をオヤジ扱いしたとこかな〜」

『はあ!?』



二人は本気で驚いたような声を出した。……そして。



のどこが乙女なんだよ!」

、乙女って柄じゃねぇーだろ!」



……コイツらシバこうかな?



「ひどっ! もういいよ! やけ酒してやる!!」

「(……だから、それが乙女じゃないだろ)」



ナルトはそう思った。



*



数十分後。
は既に出来上がっていたが、二人はその事に全く気付いていなかった。



「……。お前、ペース早い。てか、飲み過ぎ」

「うっさいわ。ほっといてよ!」


ポロッ。



そう言ったの目から涙が出て来た。



『!?』



二人は突然の涙に焦った。



「ちょ、?」

「……お、おい?」

「なるととしかまるが、わたしのことオヤジあつかいしたぁ!!」


ひっく、ひっくと泣き始めたにナルトは焦り、取り敢えず謝ることに。



「悪かったって! なっ?」

「……ほん、と……ひっく、わるいと、おもってる……?」

「ああ!」

「……えへへ。なると、だーいすき!!」



は、そう言うと勢いよくナルトに抱き着いた。



「ぅわっ!!」



バッターン!!
凄い音が部屋に響く。
急に抱き着かれたナルトはバランスが取れず、そのまま倒れたからだ。



「…………」



これを一部始終見ていたシカマルは思わず苦笑い。



「なると〜、ほんとにすきだからね?」

「……それは良いから、早く降りろ!!」

「やだぁ♪」

「シカマルも見てないで助けろよ!!」

「あーー……頑張れ?」

「てめぇーっ!!」

「……ねぇ、なると。……キスしよ?」

「はい!?」



どんどん近づいて来るの顔。



「な、なぁ? も、もしかして酔ってる?」



ピタッ。



ナルトの言葉にが止まった。



「(よっしゃ止まった!!)」

「わたしよってないよぉ? も〜いいよ! なるとのばぁ〜か!」
「言ってろ。酔っ払い」

「だから〜、よってないってばぁ」
「……お前ら仲良いな」



今まで自分に火の粉が飛んで来ないように黙っていたシカマルが口を開いたと思ったらコレ。それに静かに怒るナルト。



「シカマル……てめぇ、やっと口を開いたと思ったらそれかよ……」
「あ、はは……ま、気にすんな!」
「しかまるぅ、ぜんぜんのんでないじゃ〜ん」

「へ?」



次の瞬間、ズポッという音とともに、シカマルの口の中にお酒が入っているビンを突っ込まれた。



「!!?」

「ほら、のめ〜?」

「ぷはっ! 何すんだ!?」



中のお酒がなくなるとビンを外して貰う。そして、すぐさまシカマルはに文句を言った。



「しかまる、ぜんぜんのんでないから?」

「十分飲んだわ!!」



珍しく、シカマルが怒鳴った。
だが、は、それ無視し、またシカマルの口の中にビンを突っ込む。



「ま、えんりょしないで?」



ガポッ。



「!!(遠慮じゃねーよ!!)」
「……うわぁ……」



これを見ていたナルトは最初こそ笑っていたが、段々、シカマルに同情していった。



こんな騒ぎが明け方まで続く。外では雪が降っていた事に誰も気付かずに……。



*



……てか、ホントは酔ってないんだけどね?
いや〜二人の顔最高!
笑い堪えるのホント大変だった。


*


1年後。
今年もやって来ました。クリスマスが。そして今年もナルトの家から叫び声が。



「酒飲みたーい!」



私がそう言うと二人は慌てた様子で。



『お前は酒を飲むな!!』

「えー、やだ」

「お前、酒弱いじゃねぇーか!」
「去年どんだけ大変だったと思ってんだ!?」



……ああ、あれね。まだ覚えてたんだ。



「大丈夫、大丈夫! さあ、飲もうか」



そして強制的に飲むことが決定した二人。



「(去年みたいになるのだけは、ホント勘弁して欲しい)」

「(やべぇ、逃げたい)」



そんな二人を尻目に私はひたすら飲んでいた。



「ねぇ」

『!』



私が声を掛けるとビクッ、と怯える二人。……失礼な奴ら。



「なに怯えてんの?」



まぁ、大体予想はつくけどねぇ〜。



「あれ? 酔ってねぇのか……?」

「当たり前じゃん」

「でも……確か、去年はこれくらいで酔ってなかったか?」



は飲みながら答える。



「あははっ! これくらいで酔うわけないじゃん!」

『?』

「てか、去年も酔ってないし」

『…………』



……あれ? そういえば私、今誰に何を言った?
そう思った瞬間、部屋の気温が一気に下がったのを感じた。



「……ほう? あれが演技ねぇ」
「その演技に、オレらは酷い目にあったのか……」



二人を見ると口元は笑っていたが、目は笑っていなかった。



「…………はは」



そんな二人に私は軽く恐怖を覚えた。
……逃げようかなぁ。いや、逃げよう!



「……んじゃ!」

「おいっ、てめぇ!」

「待ちやがれ!!」



……誰が待つか。
そう思いながら私は逃げた。



*



私は木の上から二人の様子を見ていた。
そして空からは去年と同じように雪が降ってきた。



「ナルト! シカマル!」

「あっ、!」

「木の上にいたのかよ」

「えへっ。まぁ、それより雪が綺麗だよ〜」

「ああ」

「だな」



私達は暫く雪を眺めてた。
来年のクリスマスも雪が降るといいなぁ……って思いながら。



Merry Christmas♪



*

遥か昔の物を再up。
一言、やばい。