赤い目のうさぎさん
赤い目のうさぎさん
「我が君、我が君!」
「…………」
ドタドタと他の死喰い人(特に新人)に白い目を受けながら、会議中の我が君に近寄ると、頭叩かれた。
「いたっ」
「随分と遅れて登場だな、。今日は会議があると伝えた筈だが?」
「ナニソレシラナイ。まぁ知ってても放置するに決まってるじゃないですかー……いたっ」
また叩かれた。
今度は思いっきり。手加減して下さいよ。
「暴力反対。部下を大事しましょうよ」
少し涙目になりながら訴えると、鼻で笑われ一言。
「お前は下僕だ」
「ひどい」
「煩い。早く会議に参加しろ」
「嫌です!」
私の発言にヒソヒソと新人共が騒ぎ出す。あーうぜぇ。増える度にうざくなる。
「私、一介な占い師ですよ? 重要そうなことはルシウスが教えてくれますって〜多分」
「(っ、私を巻き込むな!)」
少しだけルシウスの心の叫びが聞こえたような気がしたけど、まぁ無視だよね。
「それに大丈夫ですよ。我が君のもしもの時は、例え火の中水の中?」
「棒読みに疑問系だな」
「あはっ」
「……で? なんのようだ?」
よっしゃ、勝った。
「寒いですね」
「冬だからな」
「雪が降ってきました」
「冬だからな」
「顔面に雪だま投げて良いですか?」
「冬……」
「はい?」
「お前はそんなに死に急いでいるのか。そうか、分かった」
そう呟いて杖を向けてきた我が君。 なんでー?……ってのは冗談。なにが来るか予想済み、済みだけど……避けれるかは別。
プロテゴで頑張れるといーな。
「……インペリオ」
「…………っ!?」
まさかのそっち。
いや〜それは予想外だった。
「大人しく会議に参加しろ」
空席に座らされってか私の席だよね。会議が終わるまで解放してもらえず、
終わったら終わったで「下に示しがつかないだろう!!」ってルシウスに数時間説教される羽目に。
なんなんだろうなぁ。
「顔面は駄目だったか」
ボソッと呟けば「当たり前だ!」と、また1時間追加された。彼は地獄耳だと思う。
*
「我が君が悪いんです。昔から私が話し合い嫌いなの知ってるじゃないですか」
「……。お前はそんなこと言うために態々、私の部屋に来たのか?」
「そーですよ?」
優雅に本を読んでいた我が君の邪魔をしに来たが、私の存在を完璧に無視された。
それでもめげずに愚痴っていたらやっと鬱陶しそうに顔を上げてくれた。
「暇人が。説教が足りなかったようだな」
「勘弁してくださいよ。今日はもう、十分聞きましたって」
本当に勘弁して欲しい。
ルシウスは説教が趣味だよ、絶対ね。
「日頃の行いだな」
「それ、我が君だけには言われたくないんですが」
「新しい呪文を試したいんだか、ちょうど良い実験台がいるな」
「おや、どこに?」
「……まぁ、いい。用がないなら出てけ。私は忙しい」
「あ、そうそう。アクシオ」
「?」
アクシオであるものを私の手元に呼び寄せる。
「はい、我が君」
「? これは?」
「雪うざぎです」
先程、会議をサボって作った物だ。
雪だるまを作るのはつまらなくて、ねこに挑戦してみたけど意外と難しかった。
段々面倒臭くなって雪うさぎでいいやって。
「…………」
「我が君に似てません?」
「は?」
ポカンとする我が君を見て内心ニヤニヤしながら、満足したのでドアの方に向かう。すると後ろから、
「……似ているのは目だけだろ」
という声がしてきて、私は笑みを深めた。
その後のうさぎさんの行方は知らないけど溶けるまで飾ってあったらいいなと思ったり、思わなかったり。
*
2014.01.24