後日談‐新人教育‐



後日談‐新人教育‐





「ルシウス様」

「ん?」



声をかけられ後ろを振り返ると、死喰い人の一人がおどおどした様子で自分を見ていた。



「あの、なぜ我が君は彼女のあのような振舞いを許しているのですか? ましてや呼び捨てなど……」



ああ、新人か。それと同時にこの場に居ないに恨み言を言いたくなった。



「……あれは彼女の冗談だ。いくらアイツでも滅多にしない。それと……」



私は一端言葉を切る。きっとこのまま言っても彼女のことは半分も伝わらない。

下手な解釈をされて我が君に迷惑がかかるのは困る。ああもう、なぜ私がこんなことを!



「……ないと思うが間違っても我が君を侮辱するなよ? 命が惜しかったらな」

「当たり前です! 出来る訳がありません!!」

「本人の前は勿論の事だが、の前でもだ」

「?」

「ああいう感じで分かりづらいだろうが、誰よりも我が君に忠誠を誓っているのはだ」

「は?」

「自分は良いが、人にやられるのは腹が立つらしい」

「理不尽な……」



こんなことぐらいでそんなこと言っていたら持たないぞ。



「だからこそ我が君も気に入っている」





いつからだろう。



新人が入る度に私に聞きに来るようになったのは。



彼女のフォローをするようになったのは。



「おつかれ!」

「……

「大変だったねー」



ずっとそばで見物していたのだろう。なのに、まるで他人事な彼女。

彼女曰く「新人はどうでもいい存在」らしい。



「お前のことだ、お前の。たまには自分でなんとかしろ」

「嫌だよ」



そうけらけら笑っている姿は無邪気なのに悪意の塊。

我が君に見せる態度と当たり前だがまるで違う。



……本当にもう、面倒で堪らない。





*

2014.01.12