意外な笑顔
ルシウスに良い知らせがあると呼び出され面倒くさいながらも行ってみると、何故か皆が一様に騒いでた。
その中でも一際目を引くのが泣きながら何かを囲むように群がっている連中だ。
こんな光景を私は前にも見たことがある。まさか、と思いながら人を掻き分け中心に行ってみると。
「あれー?」
ずっと待っていた人が何故かそこには居ました。
意外な笑顔
私の失敗。
十数年振りに待ち人にテンションが上がり過ぎたこと。
まぁ、うん。すこーし調子に乗ったって部分もあると思う、思うけど……っ!
「ヴォルデモート……の、そっくりさん?」
周りがざわめいた。
私を知ってる奴らは手で顔を覆ったり(特にルシウス)、私を知らない奴からは畏れ多いだの捕まえろと叫ばれ、本人からは……。
「」
優しい微笑を頂いた。
それが想像より綺麗なことに驚いて、写真撮ったら稼げそうだと思った。
その場に居るルシウスに肯定して貰おうとチラリと見ると駄目だ!+全力で首を横に振られた。
彼、頭固いもんね……ベラトリックスならもっと撮れ!! ってOKくれそうなのに。
ダンブルドアも良いかもなぁ、匿名で送ったら喜びそう……あ、駄目。彼は喜ぶだろうけど買ってはくれない。
そんなことを真剣に考えていたら、何かが横顔スレスレに通り過ぎて行った。
「へっ?」
「……アバ……」
「ちょっ」
「ん? どうした?」
「…………」
そーっと後ろを見てみると、壁にクッキリ残る魔法で攻撃された跡。
多分、同じ呪文……まさかの死の呪文の乱用に頬が引きつる。せめて磔か服従の呪文にして欲しいもんですよ。
「久しく会っていなかったから私の顔を忘れたか?」
未だに笑みを浮かべたまま……なのに忘れたことを後悔させてやるって顔に書いてある。
助けを求めて周り見渡せば、さっきまで密集してたはずなのに私の周辺から人が消え、一番近い人達は俯いてるか私と目を合わさないようにしてる。
薄情者ばっかで思わず舌打ちしたくなる。
「……あは、嫌だなぁ。 冗談ですって! 私が我が君のことを忘れるわけないじゃないですか!」
「……ふん、お前のことだ。それ以外にもロクでもないこと考えていただろ」
あら、バレてらっしゃる。
「我が君も笑えるっていう意外性に驚いただけですよ」
「……私をなんだと?」
「聞きたいですか?」
「いや、いい。これ以上、聞いたら頭痛がしてきそうだ」
「健康運ばっちりですよ?」
「お前の占いは大体外れるだろ? ……。他に言うことは無いのか?」
「ありますよ? まだ言い足りないくらいです。そうだなぁ――……おかえりなさい、我が君。ずっとお待ちしておりました」
そう言うと我が君が一瞬だけ、ふっと笑って頷いた。
「!」
……あながち意外ってわけじゃないかもな。少しだけそう思った。
*
2014.01.12